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奈央と出会えたから。<259>

[496]  麻呂  2008-10-29投稿

『ユカッッ!!』



帰る支度をして、今、椅子から立ち上がりかけたユカに、



あたしは、声を振り絞った。



緊張して、震えそうになる声を、



気付かれない様に頑張った。



『奈央?!』



キョトンとして、あたしの顔を見るユカ。



『ユカ‥‥あのさ‥‥‥。』



『うん。』



『ひとりで帰るの?!』



『そうだけど?!』


『そ、そっか。』



『うん。奈央は?!聖人と一緒に帰るんでしょ?!』



『え?!うん。』



違う‥‥。



そうじゃないっっ。


こんなコト、



言いたいんじゃないのに。



伝わらないっっ。



こんなんじゃユカに、



伝わらないっっ。



これじゃあ、ただのイヤなヤツじゃんあたし。


決して――



ユカに、聖人とのラブラブぶりを、


見せつけたい訳じゃないのにっっ。



つくづく――



口ベタな自分がイヤになった――



『じゃあ奈央。聖人と仲良く帰んなヨ。

あたしは、ひとりで帰るし。バイバイ。』



待ってっっ。



あたし、



まだ、言いたいコト言ってないっっ!!


待ってっっ!!



『ユカ待ってっっ!!』



クルッッ――



あたしの声に驚いた様子で、



こちらを振り返るユカ。



『ど‥‥どうしたのよ奈央?!

もしかして、あたしに何か気ぃ遣ってる?!

あはは。奈央は、やっぱ――』



『えっ?!』



『奈央はやっぱ‥‥奈央だぁ。』



ユカは――



満面の笑みでそう言った。



『あたしはやっぱ――』



あたしにも言わせてよユカ。



『あたしは、やっぱユカの友達でいたいんだけど‥‥。

ムリかな?!』



そんなあたし達のやりとりを、



まだ教室内にいたクラスメイト達が、



好奇の目で見ていたケド、



そんなの――



どうでもよかった。


『な‥‥奈央‥‥。』



ユカは、



思いがけない、あたしの言葉に、



びっくりした様子だった。



そして――



『ありがとう‥‥。
今までごめんね‥‥ごめん‥ね‥‥‥。』



ユカの目から、



大粒の涙がこぼれ落ちた――

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