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ロストクロニクル3―10

[409]  五十嵐時  2008-11-03投稿
フラットはその声を聞くと同時に走り出した。
「待てー!フラットー!」 「炎魔導師のくせにー!」
「裏切り者ー!」
フラットは一心不乱に逃げ続けた。
追走を振り切って一息ついた時、やってきた。
「可哀想に、なんて可哀想な子なのかしら」
暗くなった村からひとつの声。
「誰ですか?」
「私は貴方の味方よ。安心しなさい」
優しいがどこか冷たい声だ。
「何処にいるんですか!」
フラットは闇に向かって叫んだ。
「ここよ」
後ろを振り向くとそこには、オレンジ色のボサボサの髪を持つ女性が立っていた。

「初めまして、フラット君」
「あなたは誰ですか?」
フラットは自分の杖を女性に向けた。
「私はR11の『竹刀』っていう名前よ」
竹刀は笑ってみせた。
「あーるいれぶん?」
フラットは頓珍漢といった様子だ。
「あんまり気にしないでちょうだい・・・そんなことより、皆に復讐したくなーい?」
竹刀は突然声色を変え、フラットに近寄った。
「ふくしゅう・・・」
「そうよ、私の情報だとあの丘の上にある高い塔
には炎の魔導石っていう石があるらしいじゃないの」
「確かに・・・」
「炎魔導師が炎の魔導石を持つと魔力がとっても大きくなるんでしょう?それこそ・・・ミュークも止められないほどに」
「何が言いたいんですか!」
フラットは怖くなった。
「この村の炎魔導師は確か、貴方しかいないんでしょう?」
「はい」
力の無い声だった。
「だったら一緒に獲りに行かない?復讐のために」
「駄目です」
「どうして?貴方は皆から炎魔導師という理由で迫害されて、誰も助けてくれなかった。それでも?」
「・・・はい」
フラットは徐々に竹刀の言葉にひかれていった。
「村の人間はみんな敵よ。生徒も、助けてくれなかった先生も、見て見ぬふりをしていた村の住人もみんな」
「・・・そうなんですかね」
フラットは心の底から悲しくなった。
「そうよ。さぁ、一緒に行きましょう。塔へ」
「・・・はい」

二人は塔の前にいた。
「本当に大丈夫なんでしょうか?」
「大丈夫よ。でも、ちょっと混乱を起こすわね」
竹刀が指を鳴らすと、どこからともなくムシが湧いて出てきた。
空にはもう一番星が出ていた。

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