天使の道
「三日月って、天使の爪なんだって」
哲はそう言った。
「おとぎ話?」
「そうそう、どこの国か忘れたけどガキの頃に読んでもらって覚えてる」
「ふ〜ん。急にクサイ事言うね。珍しい。」
「仕事帰りで空見てたら三日月だったから思い出した。みちるも見てみ」
私は煙草とライターを持って2階のベランダにでた。
「ほんとだ。確かに爪っぽいかも。」
クールに火を点け煙をはく。
「で?」
私はクールを吸いながら聞いた。
「それがどうしたの?」
煙が空に消えていく。
「お前さ、続きが知りたいとか月がきれいとかなんか感想ね−の?俺、話すスタンバイしてたんですけど。」
「あ〜。」
「あ〜じゃねぇよ!」
「じゃあ教えて。今、煙草吸ってるし吸い終わるまで話しててや」
「放置プレイかよ。まぁ、いいや」
哲は話を進めた。
「人間が生まれる前、地球には天使と悪魔がいたんだと。天使は夜を嫌って悪魔は太陽が嫌いで夜は悪魔の時間。太陽が出てる時は天使の時間。それがずっと続いてた時、太陽が沈み天使と時間の交代にきた悪魔が天使に話を持ちかけてきたんだよ。」
「何て?」
「夜は何も見えないからなにか照らすもんはないかって。そしたら天使が帰り際に自分の爪を置いていったんだと。」
「それだけ?」
「人の話は最後まで聞け。」
「はいよ。」
私は灰を空き缶に落としまた吸った。
「それからというもの天使は太陽が出る時間帯になっても悪魔の所へ来なくなったんだよ。悪魔に捧げ物をしたって大天使が怒ってその天使を二度と地球には行かせないようにしたと。」
私はクールの2本目に火を点けようとしていた。
「天使は悪魔が好きだったんだって。」
点けようとした手が止まる。
「天使が来れなくなった訳を聞いて悪魔は天使が置いていった爪を、毎夜ずっと、とぎ続けた。でも爪は細くなるどころか大きくなったりその半分になったり形を変えたんだと。」
「悪魔も好きだったと」
私が横槍を入れると、
「ガッテン、その通り」
哲が答える。
「それから悪魔は人間が生まれるまで天使を想いながら、ずっと爪をとぎ続けたとさ。はい、おしまい、おしまい」
私はライターに火を点ける恰好でしばらく三日月を見ていた。火の点いていない2本目を口にくわえたまま・・。
続く
哲はそう言った。
「おとぎ話?」
「そうそう、どこの国か忘れたけどガキの頃に読んでもらって覚えてる」
「ふ〜ん。急にクサイ事言うね。珍しい。」
「仕事帰りで空見てたら三日月だったから思い出した。みちるも見てみ」
私は煙草とライターを持って2階のベランダにでた。
「ほんとだ。確かに爪っぽいかも。」
クールに火を点け煙をはく。
「で?」
私はクールを吸いながら聞いた。
「それがどうしたの?」
煙が空に消えていく。
「お前さ、続きが知りたいとか月がきれいとかなんか感想ね−の?俺、話すスタンバイしてたんですけど。」
「あ〜。」
「あ〜じゃねぇよ!」
「じゃあ教えて。今、煙草吸ってるし吸い終わるまで話しててや」
「放置プレイかよ。まぁ、いいや」
哲は話を進めた。
「人間が生まれる前、地球には天使と悪魔がいたんだと。天使は夜を嫌って悪魔は太陽が嫌いで夜は悪魔の時間。太陽が出てる時は天使の時間。それがずっと続いてた時、太陽が沈み天使と時間の交代にきた悪魔が天使に話を持ちかけてきたんだよ。」
「何て?」
「夜は何も見えないからなにか照らすもんはないかって。そしたら天使が帰り際に自分の爪を置いていったんだと。」
「それだけ?」
「人の話は最後まで聞け。」
「はいよ。」
私は灰を空き缶に落としまた吸った。
「それからというもの天使は太陽が出る時間帯になっても悪魔の所へ来なくなったんだよ。悪魔に捧げ物をしたって大天使が怒ってその天使を二度と地球には行かせないようにしたと。」
私はクールの2本目に火を点けようとしていた。
「天使は悪魔が好きだったんだって。」
点けようとした手が止まる。
「天使が来れなくなった訳を聞いて悪魔は天使が置いていった爪を、毎夜ずっと、とぎ続けた。でも爪は細くなるどころか大きくなったりその半分になったり形を変えたんだと。」
「悪魔も好きだったと」
私が横槍を入れると、
「ガッテン、その通り」
哲が答える。
「それから悪魔は人間が生まれるまで天使を想いながら、ずっと爪をとぎ続けたとさ。はい、おしまい、おしまい」
私はライターに火を点ける恰好でしばらく三日月を見ていた。火の点いていない2本目を口にくわえたまま・・。
続く
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