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ころしてください3

[677]  睦月  2008-12-17投稿
「こちらに奥様がいらっしゃるとお聞きしました。……映子さんで、よろしいですね?」

すっと殺し屋は喪服の女の傍らに寄った。
近くで見ると、あの薄幸そうな男には不釣り合いなほど、美しい女だった。
うっそりとした、密林のような睫毛は涙の露がしたたる。はっとするような美人、と言ったような容姿だ。男の妻が、焦点のあわない目で殺し屋を見つめた。

「…誰ですか、あなた」
「…わたくしは、こうゆう者です」

すっと名刺を差し出した。
『ころしや。』

上質な紙には、無機質な形の字で、全部ひらがなでそう書かれていた。
それを見た男の部下が、苛立たしげに言った。

「っ悪戯かよ!」
「とっとと帰れよ!」

激昂する男たちを尻目に、殺し屋は妻にむかった。

「実は旦那さんから生前に『あるものを殺してくれ』と頼まれまして。…ああ、怒らないで。依頼したっていう証拠ならたくさんあります。まずはサイン、捺印、ビデオテープ、あとは…手紙」

ぴら、と出したのは無機質な白の封筒。宛名は『村山映子さま』となっている。
もうひとつ取出したのは『村山葵、桜ちゃんへ。パパより』と書かれた、キャラクターものの便箋。

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