携帯小説!(スマートフォン版)

トップページ >> ミステリ >> 黒髪の少年は5

黒髪の少年は5

[473]  2008-12-24投稿
「ばぁっ!」
「うわぁっ!」
小さな葉っぱだらけの由宇君が、剣土君を押しやるように驚かして私達から遠ざけた。
「ゆ!ゆうくんみっけ!!」
「えへへ〜」
「なんで でてきたの〜?」
「どうせみつかるかな〜とおもって」
「あははは!じゃあ、つぎはゆうくんがおにだね」
赤い唇の横にえくぼを作りながら、鬼は笑った。
由宇君も笑う。
鬼はまた、ちらりと私達の方を見たが気付いてはいないようだった。

彼らは倉庫から離れ、ジャングルジムの方へ歩いて行く。
「…おにいちゃん、つかまっちゃった…」
悲しそうに言う美祢ちゃん。
「次は由宇君が鬼かぁ…一緒に隠れられないね」
「うん…」
「二人で隠れなきゃね」
「………うん…」
「美祢ちゃんも剣土君に捕まりたかった?」
「…う…ん」
私は美祢ちゃんの頭を撫でた。
「捕まりに行く?」
「……みね…」
「ん?」
「サキせんせいはかくれてて!」
言うと私のお腹から手を離し、かけて行ってしまった。
倉庫の陰から出た瞬間に剣土君に見つかった美祢ちゃんは、照れたように笑っていた。
「なんででてきたの?みね」
困ったように由宇君が聞く。
「えへへ〜」
美祢ちゃんはそう言いつつ由宇君に抱き着いた。
「あとはりゅうくんとせんせいかぁ〜」
抱き合っている由宇君と美祢ちゃんを眺めながら、剣土君は葉っぱの生い茂る木と私の方を交互に見た。
………。
確実に隠れ場所分かってると思うんだが…。
「りゅうくんからでいっかぁ」
そう言うと彼は木の下へ行き、
「りゅうくんみーっけぇ」
と言った。

それからすぐに私も見つかり、由宇君が鬼のかくれんぼが始まった。
剣土君は私と美祢ちゃんと3人で隠れて、昼休みが終わるまで見つからなかった。
転園して来たにも関わらず組にすぐに馴染めているようだ。

それまであった、園長先生の剣土君を見る不自然な目も
だいぶなくなってきたようだし。

前に聞かされた、彼に関する悪い噂も忘れつつあった。
きっと不運なだけなのだ。
そしてきっと母親が過保護なだけなのだろう。

こんなに可愛い子供なのだから、過保護になるのも分かる。

…。
…きっとそうだ。

感想

感想はありません。

「 枕 」の携帯小説

ミステリの新着携帯小説

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス