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黒髪の少年は?−4

[457]  2008-12-27投稿
30分くらい歩いたと思う。
時計はないので、はっきりとは分からないが。
少なく見積もって30分。
雨は止むことはなく、弱くもなる気配はなかった。
剣土君は時折しゃがんで休みながら進んだ。
なぜか周辺を廻っているはずの警察や、傘をさした歩行者や車は見当たらず、私たちはずっと誰の目にもつかず進んだ。

それは多分、剣土君が大通りを進まないからだとは思うのだが。

「もうすぐだよ」
彼がそう言った所から見えたのは、私も良く知る大きな河だった。
その河は昔よく氾濫していたらしく河辺に沿って堤防がたっていて、
その堤防から河へ下りて行く階段を下りると、ちょっとした長細い広場のようになっており、そこで釣りをする人もいる。
しかし豪雨により黄土色に濁り増量したその河は、もうすぐその広場を覆い隠そうとしていた。

「あの橋の下なんだ」
剣土君はそう言って、階段を下りた。
車が通るための鉄筋コンクリート製の橋の下は、雨は降らない。
私もその階段を下りて流君の姿を捜したが背の高い緑の草が一面に生えていて分からなかった。

「なんでこんな所に…」
剣土君は雨にたっぷり濡れた自分よりも背の高い草の中へがさがさと入って行った。
「先生、早く!!」
揺れ動く草を目印に、私も草を掻き分けて進んだ。
ふと思う。
なぜ、知っているんだろう。
彼は。流君の居場所を。

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