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ロストクロニクル5―7

[413]  五十嵐時  2009-01-01投稿
「この本棚にはもうひとつおかしなところがある」
タクトは依然として本棚を見つめたままだった。
「どこがおかしいの?」
「奥行きがないんだ」
「奥行き?」
確かに両隣の本棚のせいで分かりにくいが、他の本棚の位置と比べるとこの本棚だけ少し前に出てきている。
「奥行きがないということは奥に何かあるということだ」
「考え過ぎじゃない?」とパールが呆れていた時には既にタクトは次々と本棚の本を床に落としていた。音がとても大きい。
「何してるの?」
パールは周りに誰も居ないことを確認しながらタクトを止めようとした。
タクトは「大丈夫さ」と自信満々な笑みを見せると本を全て落とし、次に本棚の棚を壊し、人がひとり入れる程度の空間を作った。
「何してるの!怒られるわよ!」
パールは怒っていたつもりだったがタクトは気にせず「見てなってば」と再び自信満々な笑みを見せ、本棚に体当たりした。

よく分からなかった。タクトが体当たりした本棚にはぽっかりと大きな穴が開き、穴のすぐ下には地下へ通じる道があり、その穴へタクトは落ちて行った。そして、いちばんよく分からなかったのはタクトを追って、その穴の中へ入って行った自分自身だった。
今、パールはタクトを追って穴を落ちていた。とても早い速度で落ちていた。
地面が見えてきた。
こんなスピードで地面に落ちたら死んじゃう。
だが、パールが落ちたのは水の中だった。
「パール。大丈夫?」
タクトはパールを水から引き上げた。
「あ、ありがとう。びっくりした。ここは?」
「多分地下だと思う」
タクトは周りを見渡しながら答えた。
「図書館と繋がっていたとは思えないわね」
地下は人の手が入っていないらしく、地下というよりも洞窟というイメージの方が当てはまる。タクトたちが落ちたのは地底湖なのだろう。地底湖の先には真っ暗な広い道が続いていた。
「これからどうするの?上には上がれないし、この先に進むのも危険だし」
「うん。それに、ウェドとフラットとウェイトもいない」
タクトは考えた。このまま進むべきか、助けを待つべきか。
「・・・進もう」
静かに言った。
「えっ?」
「このまま助けを待っても誰も来ないだろう。だから、出口を探す為に進むんだ」
再び静かに答えた。
「嫌よ。だって第一に真っ暗で何も見えないのよ」

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