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Eden

[396]  あげは  2009-01-03投稿


「エリス…風が心地よいな。」

「そうね、今日もいいお天気ね。」
翼を折り畳み空を眺めた。

果てしない空
柔らかな雲
香りのいい花


「…なぁ、あの山の向こうにどんな世界があるんだろう。」
ゼルスが呟いた。

「ここと同じようなものよ。」
微笑んでエリスは答えた。


「俺…あの向こうに行きたい。」
「…でも」
「果てしなく遠いのは分かっている。羽が擦り切れ、折れるかもしれない。だが、あの向こうに本当の楽園があると思うんだ。」

「ゼルス…止めて!ここで私と今まで通り暮らしましょう?」
金色の美しい髪が風になびく。


「止めるなエリス…エリスは危険な旅だから俺となんか別れ別の人と付き合うといい。」


エリスは無言で涙をためて飛びさっていった…


「エリス…」

山に向かいゼルスは飛んだ。
風は向かい風
山が拒むかのように。

雷…雨…エデンと呼ばれた世界にめったにないほど荒れる。

「何があるんだ…」
ゼルスは諦めなかった。
真実を確かめに。


数日が過ぎ飛ぶ力は尽きた。
ようやく山の全容を見るほど近づいた。

だが…気流が激しく飛べない。
「…歩くか…。」
彼の身体は気力で唯一動いている。目的の為に。

だが…疲労は隠しきれない。
出発前の美しい翼は折れ血に染まり羽は落ち見る影もない。
しなやかな腕や脚は筋肉でゴツゴツとし、眼光は鋭い。

彼の肉体は限界を超え倒れてしまった。

「ゼルス!!」
「ゼルス!!」
倒れてしまったゼルスを
必死に看護した…
羽で傷をふさぎ血を止め…
「エリス…どうして…」
「バカ…愛してるのよ…あなたといたいから…どうして連れていってくれないのよ…。」

「へへ…ひどい格好だな…」
「ゼルスもよ…」
口づけを交わした。

「さぁ、行きましょう。」
エリスとゼルスは二人登り始めた。
エリスは知っていた。
ゼルスのそばが一番の楽園だと。



…出発から数ヵ月ついに山の頂上に着いた。

「あぁ……なんて素敵なんだ。」

全てが輝くように映ったことだろう。
以前いた地と同じ景色なのに。

だが、他の人はいない。
二人きりの世界。


後に彼らはこう呼ばれた。

アダムとイヴ…………

感想

  • 36460: いいですね! やく [2011-01-16]

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