携帯小説!(スマートフォン版)

[913]  KSKくま  2009-01-10投稿
美しかった私の婚約者の話をします。
彼女は看護師で、私の住んでいる町の私立の病院に勤務していました。
初めて彼女にあったのはその病院で、私が右手の親指を脱臼骨折したときでした。院内の看護師は少なく、とりわけ若かった彼女は記憶に残る存在でした。
処置より数日経った日曜日に私は本屋で彼女に再会しました。普段はそんなことはしないのですが、挨拶を交わし昼食に誘い、そこから付き合うようになりました。2ヶ月ほどすると、私は彼女と同棲するまでに至りました。
付き合い出して三年半ほどたったころでした。その時は既に互いの両親にも挨拶を済ませ、プロポーズもした後だったとおもいます。
職場から帰って来るなり彼女は頭痛と吐き気を訴えました。心配して熱を計ると微熱がありました。二人ともその時は単なる風邪だと信じていました。市販の薬をのむと翌日には熱も下がり、彼女は私が止めるのも聞かず仕事に向かいました。
生前の彼女に会ったのはこれが最後でした。

彼女の母親から電話があり、病院の遺体安置室へ通されました。私はおろか、彼女の両親でさえも死因については聞かされておらず、出入口に立つ警官に私共々まごついたほどです。
「見ますか?」と傍らの医師は聞きました。珍妙な感じはしましたが、それも彼女を見た時に合点がいきました。
思わず吐き気を催し、部屋の床に胃の内容物を吐いてしまいました。彼女の父親も同様で、母親だけが彼女を凝視していました。どちらかと言えば動転して身動きが取れなかったようです。
遺体は目玉が半分ほど飛び出し、額には沢山の血管が浮き出ていました。その筋は内出血を起こし、無数の川のように見えました。そして、頬や私が何度となく重ね合わせ唇はニキビの様な吹き出ものが点々とついていたのです。
「娘さんで間違いありませんか?」との警官の問いは母親の耳元で虚しく三回に渡って繰り返されました。その間に私はもう一度彼女の姿を見ようとしましたが、ちらっと見ただけで諦めて目を伏せました。
「間違いありません」母親は答えたが、どこからそう判断したのかは私には解りかねることでした。

感想

感想はありません。

「 KSKくま 」の携帯小説

ホラーの新着携帯小説

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス