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虫 2

[730]  KSKくま  2009-01-12投稿
生前美しかった私の婚約者が何でこんな死に方をしなければならなかったのでしょうか?彼女の亡くなった日の朝に私は元気な彼女の姿を見たのです。
そんな私の心中を察してか、担当医は両親と共に私も診察室に招き入れました。

「当病院が検査した結果、娘さんの体内から、寄生虫の一種が見つかりました」
平然と発する医師の声に対して両親は当然のことながら、眉をひそめ、釈然としないような顔色を見せました。私も同じような顔をしていたはずです。
いくら虫に寄生されたからと言ってこれほど早く死に至るなどとは信じられません。私の感覚ではそれは腹痛を覚える程度のものでした。

「うちの娘がぎょう虫に殺されたって、アンタ言いたいんか?」
娘を失った父親は空回りしながらも怒りをぶつけました。私はその罵声を聞きながらやっと現実感を抱き、うつむきました。そうです、只今見た遺体は間違いなく彼女だった。彼女を産んだ女性がそう認めたのです。そして私は彼女と半生を共にすることを誓った。はばからずに言えば・・・愛していたのです。
なぜその時までその事実を忘れていたのか、今となってはわかりません。

「お父さん、落ち着いてください。非常に皆さんが苦しんでいるのはわかります。娘さんを・・・そしてフィアンセをなくされた・・・気持ちはわかります。しかし、私には皆さんを、はい、そうですかと帰すわけにはいかない事情があるんです」
医師は予想していたように父親をなだめ、一つため息を吐いて続けた。
「いいですか?これは皆さんの知り得ない寄生虫によるものです。・・・はっきり言います。新種です。新種の寄生虫に娘さんは感染していたのです。感染経緯も病状の経過も全くわかりません。もちろん、予防法も・・・。ですから、まずご両親には詳しく遺体を調べさせいただくことを了承願いたい」
医師は私の方に向き直りました。
「そして、あなたには生活上のことをいくらか質問させてもらいます」


私はこのとき、鳥肌が立つのを覚えました。

私の中に虫が居る!!

それを考えると不安という表現では足りない、恐ろしい感覚が体内で蠢いているようでした。

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