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○●純+粋な恋●?

[559]  沖田 穂波  2009-01-21投稿

2-? 春の陰

『純,今日は何かあったのか?』

純の兄,京太郎は尋ねた。純は何を書くでもなく,上の空でただ墨を擦り続けている。

『え,ぁ,はい,』

純ははっと我に返った。

『今日,裏の桜並木で,とても心優しい方に出会ったのです。』

『心優しい?』

京太郎はあぐらをかき,顎に手を当てた。
純の話を聞く時,いつもこの体勢をとる。


『はい,その方は,一匹の小さなツバメのヒナの為に,墓を作っていたのです。』

『ほぉ‥』

京太郎は,じっと純の話に耳を傾けている。

『誰にも気づかれぬまま消えて行く命が可哀想だと,墓は1つの命が存在したしるしなのだと,その方は言ったんです。』

純は天井を見上げ,

『あんな美しい心を持った人,初めてだなぁ。』

と独り言の様に呟いた。

『女か?』

京太郎はからかった。

『そうです。』

しかし,純はまた上の空である。
京太郎は微笑んだ。

―‥ 純,惚れたな。

色恋沙汰に疎い純にとって,多分初恋だろうと,京太郎は予想した。
京太郎の予想通り,確かに,純は初恋である。

しかし,それが災いした。
初恋だと,純,本人が気付くまでに時間がかかりすぎてしまうのだ。



その2日後,
純は吐血した。

○●続く●○

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