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○●純+粋な恋●?

[490]  沖田 穂波  2009-01-23投稿

2-? 春の陰

女の名は,階堂粋乃(いくの)と言う。
階堂家と言えば,ここらでは古くから続く名家として知られている。

その粋乃は,今日も桜並木の墓を訪れていた。

純は,今日も来ない。

『あ,姉さんこんなとこにいた!!』

粋乃の弟,拓和(たくお)は桜の木の陰からひょっこりと顔を出した。

『あっ!こら!書道教室はどうしたの?遅れたら,師匠が怒るわよ?』

粋乃は,この7才の幼い弟を優しく叱った。

『分かってるよぉ,もうすぐ行くもん。』

拓和はツンと口を尖らせた。しかし,何かを思い出した様に話し出す。

『昨日ね,教室の隣の家の猫かいたんだ!そっくりだって,師匠,ほめてくれたんだよ!』

よほど嬉しかったのか,拓和の目はキラキラと輝いている。

『あら,良かったわねぇ
その猫の絵,私も見たかった。』

拓和は聞くなり走り出した。

『じゃあ,今日かいてきてあげる!』

拓和は粋乃を見ていたので,桜の木の根に,足がつまずいた。

『拓和!ちゃんと前見て走りなさい!』

いったいどうしたら,前を見ずに走れるのだろうか。この歳の男の子は,やんちゃだ。

『わかってるって!
教室に遅れちゃうから,行ってきまーす!』

飛び跳ねるように,拓和は花びらの舞う桜並木を駆けて行った。
よほど教室が楽しいらしい。

粋乃は,
そんな弟の姿を心配そうに,いつまでも見送っていた。


●○続く○●

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