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○●純+粋な恋●?

[534]  沖田 穂波  2009-01-28投稿

3-? 初夏の路

拓和はまた駄々をこねていた。

『嫌だ!!まだ帰りたくない!!』

『何言ってるの!!もう日が暮れるでしょう!』

粋乃がこの駄々っ子を厳しく叱った。しかし,

『帰るもんか!!師匠のそばにいるんだ!!』

拓和は純の袖を掴み,離れようとしない。
純は嬉しいやら粋乃に申し訳ないやらで,複雑な心持ちになった。

『拓和,今日はもう家に帰りましょう。お姉さんさんを困らせては駄目です。それにここら辺は,暗くなると幽霊がでるんですよ。』

勿論,拓和を帰す為の口実である。
幽霊。この単語を聞いて拓和の顔色が変わった。

『幽霊は,嫌いだ‥』

純の袖を掴んでいた手が緩んだ。

『じゃあ今日は家に帰る事です。幽霊には,拓和が帰るまで姿を見せないよう,よく言っておきますから。』

『本当?』

幽霊と聞いて青ざめた顔が純を見上げた。

『本当です。
さぁ,早く帰りなさい。』
純は,拓和の背中を押した。

『分かった。帰る‥。
でも,絶対にまた来るからね!!』

拓和は粋乃に手を引かれて,まだスッキリしない面持ちで純の部屋を出ていった。

その時,粋乃は純に軽くお辞儀し,

『では,いずれ‥。』

と言葉を残した。
いずれとは何の事なのか純が考えている間,
手を繋いだ姉弟の影は,一番星の光る,初夏の道を歩いていた。

●○続く○●

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