4の呼吸 4-4
「いやぁ、驚いたな。」
木戸は心底驚いた様子だった。それには部下の阿部も同感だった。
「まさか、生徒資料の備考欄にあんなにびっしり個人個人の特徴を書いてるんだからなぁ。」
「それだけ教師も努力してるんですよ、ホントに教師にならなくてよかったですよ。」
確かに、教師というのは普段の仕事に加え、生徒の名前や特徴を把握しコミュニケーションを計れなければならない。むしろ、最近ではそちらを重視する傾向が強い。世間の目が厳しくなっていることもある。
木戸たちは資料を見た結論として、担任の教師に話を聞くことにした。先程、終礼になったので、隣の職員室に行けば、教室から引き上げた教師に会うのはたやすいと踏んだ。
「担任の顔はわかってるな。」
「はい、わかっています。でも見当たらないですね。」
チッ、と木戸がいらついたその時だった。慌ただしく職員室に戻った女性がいた。
「木戸さん。」
木戸は阿部の声で察した。それは紛れも無く、北澤真一の担任の佐藤静子だった。
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