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盲目のピアニスト

[562]  ファスナー  2009-02-22投稿
時間なんて要らない。
ただ朝起きて夜寝るだけ。
過ぎ行く季節に何も見いだせず、毎日くそ面白くもない学校へ行き特別心の置ける親友でも無いクラスメートとつかず離れず友人と言う関係を保っている。

世間では時間が流れるのが早いと言う声がちらほら聞こえるが、そんな事は無い。
至って普通に進んでいる。
だが、別に否定している訳じゃない。
現に俺自身、時の流れが気の遠くなる程遅く感じる。
しかし、時間と言う区切りのおかげで毎日変わらず時が流れているのが感じられる。
広い宇宙のほんの一部、太陽の周りを一周すれば、また1からやり直し。
この行為に時間と言う二十四つ三百六十五の区切りを付けた人物は天才だ。
それのおかげでやり直しを始まりとして迎えられる。
今日も区切られた時間のおかげで一日が終わり帰路につく。
家に着き、出された課題も済まし、いつも通り飯を食い風呂に入る。
ふと今日の放課後の事を思いだした。
教室を出る途中、何処からか聴こえてきたピアノの音。
普段から物事に関心を示さない俺だが、その音が妙に心地よく、その吸い寄せられるようなメロディーに時間を忘れる程聴き入ってしまっていた。
しばらくすると音が止み、はっと我にかえった。
時計を見ると既に6時を廻っていた。
慌てて帰って来たけどあれは一体何だったんだ?
今考えてみたら心霊現象ともとれる出来事だった。
よくあるだろ?放課後の音楽室でピアノの音がするなんて。たいてい一つの学校に三つか四つしかない七不思議の一つに。
俺は風呂から上がりベットに横になって考えた。
……そういえばいつ以来だろう、あれだけ一つの事に集中したのは。
明日、確かめてみようか。
考えている内にだんだんと頭の中を睡魔が襲う。日々の疲れが精神的疲労として考える事を止めさせる。
……俺にもまだ興味が持てる事が有るんだな。そんな感情とっくの昔に無くなったと思っていたのに。
俺はそのまま眠りにつく。


まさか次の日、一人の少女との出会いで停滞しているこの世界が少しずつ未来へと動いて行くとはしらずに…


……僕達は動き出す。
……加速度的に。

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