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おいでおいで

[915]  響音(おとね)  2009-03-02投稿
初めてその手を見たのは、その場所で死亡轢き逃げ事故が起きた2日後だった。

青白い手が、曲がり角からおいでおいでしているように見える。
良くないものだというのはすぐに分かった。

気付かないふりをして、すぐ近くを通らないように道路の反対側に渡り、通り過ぎようとした。

見てはいけないと思ったのだが、ついチラッと視線を向けてしまった。

曲がり角には、女がうずくまるようにして座っていた。
そして、こちらをじっと見ている。しまったと思い、急いで視線を逸らすと
目の前に女がいた。
悲鳴も出ずに立ち尽くした。
白い手がゆらりと動いた。

おいで

頭を轢かれたのか、頭部はかろうじて原型を留める程度だった。


おいで


その顔が、
笑った。



おいで





最後に見た光景は、猛スピードでこちらへ突っ込んでくるトラックの影だった。

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