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人殺し

[623]  雨蛙  2009-03-13投稿








人を殺した。


なんとなく、殺してみた。


人を殺した。


思い付きで、殺してみた。


人を殺した。


なんとなく気持ちがすっきりした。


人を殺した。


かわりに不幸になった。


人を殺した。


人を殺したから、不幸になった。


人を殺した。







人を殺した私は、




人殺し。









浅い眠りから覚めた私は、逃れられない罪を背負っている事を思い出した。
自分の真横に横たわる、死体。その死体が話しかけてくる。


「お前が殺したのだ。」


一見寝ているだけにも見える、でもそれは死体。ただひたすらに私を責める、でもそれは死体。

私は昨日、知人を手に掛けた。
ただひたすらに首を締めた。
理由などない。ただ締めた。締め殺した。

知人の首を締めた私の指、その両の手の指は、生々しい感触とともに知人の皮膚、血管を圧迫し、知人の血の流れを歪めた。10秒としないうちに、知人は抵抗をやめた。失神した。

身体が熱くなった。知人ではなく私の身体が。まるで知人の体温を吸い取るように、私の身体が熱くなった。

止まらなかった。
知人を失神させた私の指は、さらに加速した。

知人は死んだ。
あっけなく死んだ。


人は死ぬ。蒲公英のように死ぬ。

そよ風に吹かれ、緩やかに穂を減らすものもいれば、人に毟られ、思わず生を失うものもいる。
知人は後者だった。
つい先程まで前者であった知人は、私によって後者に成り代わった。


私が変えた。私が。



神になれた気がした。
人の命を自由勝手に捩じ曲げる。それは神。


ただし、それは偽りの神。神々しくもなく、崇められもしない、それは死神。
殺す事しか出来ない、死神。

私は死神だったのだ。
いや、人はみな死神だったのだ。




私は埋めた。知人を、いや、今となってはただの死体。その死体を埋めた。



どこか遠くに行こう。


人の寄り付かぬ場所に。



どこか遠くに行こう。


もう私は人ではないのだから。






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