人殺し
人を殺した。
なんとなく、殺してみた。
人を殺した。
思い付きで、殺してみた。
人を殺した。
なんとなく気持ちがすっきりした。
人を殺した。
かわりに不幸になった。
人を殺した。
人を殺したから、不幸になった。
人を殺した。
人を殺した私は、
人殺し。
浅い眠りから覚めた私は、逃れられない罪を背負っている事を思い出した。
自分の真横に横たわる、死体。その死体が話しかけてくる。
「お前が殺したのだ。」
一見寝ているだけにも見える、でもそれは死体。ただひたすらに私を責める、でもそれは死体。
私は昨日、知人を手に掛けた。
ただひたすらに首を締めた。
理由などない。ただ締めた。締め殺した。
知人の首を締めた私の指、その両の手の指は、生々しい感触とともに知人の皮膚、血管を圧迫し、知人の血の流れを歪めた。10秒としないうちに、知人は抵抗をやめた。失神した。
身体が熱くなった。知人ではなく私の身体が。まるで知人の体温を吸い取るように、私の身体が熱くなった。
止まらなかった。
知人を失神させた私の指は、さらに加速した。
知人は死んだ。
あっけなく死んだ。
人は死ぬ。蒲公英のように死ぬ。
そよ風に吹かれ、緩やかに穂を減らすものもいれば、人に毟られ、思わず生を失うものもいる。
知人は後者だった。
つい先程まで前者であった知人は、私によって後者に成り代わった。
私が変えた。私が。
神になれた気がした。
人の命を自由勝手に捩じ曲げる。それは神。
ただし、それは偽りの神。神々しくもなく、崇められもしない、それは死神。
殺す事しか出来ない、死神。
私は死神だったのだ。
いや、人はみな死神だったのだ。
私は埋めた。知人を、いや、今となってはただの死体。その死体を埋めた。
どこか遠くに行こう。
人の寄り付かぬ場所に。
どこか遠くに行こう。
もう私は人ではないのだから。
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