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航宙機動部隊前史後編・38

[530]  まっかつ  2009-03-15投稿
後銀河連合と星間国家共同体は、それぞれ銀河元号一六0八年・一六一0年に崩壊した。
それは、より正確には自然融解してしまったと言うべきだった。
百万隻の機動部隊も百億人の大軍も、更には全人類を何百回も滅ぼせる最終兵器群も結局は洗脳から覚醒し、戦争に携るあらゆる事を拒否した一千億星民達を前にしては、何の役にも立たなかったのである。
勿論、犠牲は大きかった。
次元破壊弾を含んだ弾圧・討伐により、凡そ十億の人命が最終平和思想成就の為に殉じなければならなかった。

最終平和主義の新たなる総本山となったアセンブリィは、ヘテ星系の二の舞を避ける為、常に移動しながら闘争を指導していたが、二大超大国が人心を失い、離反した中央域諸国を傘下に納めると、名称を人類総会《ヒューマン=アセンブリィ》と改め、中央域文明圏の再興を宣言した。
銀河元号一六0九年の事である。

こうして、第四次恒星間大戦は終結を迎えた。
だが、まだまだ火種はくすぶっていた。
急速に解体しつつあったとは言え旧二大超大国勢力は今だ純軍事的には強大であったし、それを後押しする太陽系財閥群や何よりも宗教界が健在であった。
人類総会陣営が掌中に収めたのは中央域の主要星系群のみであり、領域的には全人類宇宙の僅か二割に過ぎず、辺域は今だ騒然としたままだった。
人類総会は大急ぎで根源章典を制定した。
銀河元号一六一二年に満場一致で採決された《人類の誓い》一三章である。
その中核部分は、

第一章・全て人類は現有種を保持すべきであり、これを人為的に改造・変質してはならない

第二章・宇宙文明の中心は中央域であり、中央域文明圏こそ現在と未来の人類の創造と営為を指導すべきである

第四章・旧来の最終戦争論及びそれをもたらした宙邦勢力の恒久的な解体及び放棄

第九章・最終兵器の使用・応用・流用の禁止、また、最終兵器の完全なる処分

第一二章・監視と強制を伴わない全銀河規模の統一、その具体的機構を人類総会が担う事

等から成り立っていた。

人類総会の成立によって、その影響力の後退を恐れた宗教界では、最終戦争論者と最終平和思想派との激しい抗争が勃発し、一年足らずの内に主要聖職者の八割までもが、命を落とすか、追放もしくは自ら下野するか、投獄ないし処分を受けるかと言う有り様となっていた。

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