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奈央と出会えたから。<335>

[514]  麻呂  2009-03-17投稿

* * * * * *

中2の夏休みが終わった――



あたしの体調も良くて、



ミズホさんとバレンタインデーのチョコ作りをした日以来、


過呼吸の発作は起こしていなかった。



たぶん、



あのトキ、聖人が優しく抱きしめてくれて、



あたしの心の不安を取り除いてくれたから、



いつも不安定だった気持ちが、少し落ち着いたんだって、



そう、思うんだ。



ケド、



その代わりに、



時々、胸がキュンッッて痛くなるんだ、


あなたを想うと――




『奈央ぉ〜♪あたし先帰ってるね。今日、カレと会うんだ♪』



『うん。ユカ、超イケメンのカレと仲良くね!!』



『イヤだっっ。奈央ったら。写メ、チラッと見ただけじゃん。』



『だって、イケメンだったもん。』



そう、



ユカの好きなヒトが、



夏休み後には、カレシになっていた。



『じゃあね♪奈央♪』



『うん。また明日ね♪』



ユカのカレシは、あたし達より1コ上の中3だった。



ユカが言うには、同じ塾で運命的な出会いをしたみたい。



学校は、隣町の中学らしいんだ。



写メを見せてもらったケド、結構、カッコ良かった。



タイプ的には、聖人と正反対のタイプだった。



髪も染めていなくて、黒だったし。



あたしの周りが、すごく派手なヒト達ばかりだったから、



逆に、新鮮さを感じた。



ユカ、すごく幸せそうな顔してた。



よかった。





『奈央。何してんのよ?!帰るぞ。』



『うんっっ。待って、今行くっっ。』



そして、



あたしも大好きなあなたの元へ――





『今日も手ェ冷て―のな?!』



『うん。』



『でも、冷たくて気持ちイイかも。』



『あはは。』



『マジで。』



『聖人の手は、いつも温かいね。』



『おぅ。』



『手‥大きいよね。』



『ばーか。人の手で遊ぶなッ。』



『温かい‥‥。』





これからもずっと、


ただ、



こうしていたいだけ――



ただ、



それだけ――

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