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A型の女

[1029]  ピロリ  2009-04-11投稿
Y子はある口癖があった。
「私、A型だから。」
どんなときでもY子はA型を主張した。
特に相手がB型とわかると頼みもしないウンチクとため息をつき、
「これだからB型は…
A型がどれだけ我慢してるかわかってないよね。A型は繊細なのよ」

友人のB型K子はむっとするもののこれで彼女がモチベーションを保っているなら適当に相槌を打ち返事をしておこうと思った。

ある日Y子とK子はドライブにでかけた。
相変わらずY子はB型K子をけなしていた。
K子はうんざりしながらもうんうんと聞いていた。
K子はY子のせいでA型が嫌いになっていた。
A型と聞くだけで嫌な顔をするほどA型恐怖症になっていた。

「ほらB型って急に勝手に機嫌悪くなって怒りながらも次の日ケロっとしてるじゃない。常識疑うし。」
Y子は止まらない。
K子は来るんじゃなかったと後悔しつつ愛想笑いを浮かべながら流していた。

しかしK子の心は既に限界だった。

今日こそ楽しく過ごせると思ったのに…
Y子がA型主張とB型批判を始めたのはいつ頃だったんだろう…
確か血液型のテレビを見てから…

K子は運転しながら心非ずで考え込んでいた。

「ほらB型は都合が悪いとすぐ黙る…」

とY子が憤慨した瞬間、車は宙を舞った。

グシャ…

車は上から落ち潰れた。


K子はぐったりしているY子を揺すった。

「Y子…しっかりして…Y子」


遠くでサイレンが響いていた。


病院についてしばらくしてY子は息を引き取った。
K子は奇跡的に軽傷ですんだがY子の死に呆然と立ち尽くしていた。

『Y子…ごめん…私のせいで』


その時二人の医師がぼそぼそ会話をしているのが聞こえて来た。

「さっき事故で運ばれた患者…」
「ああ…」
「遺族に体の提供頼んでみるか?」
「もちろんだとも。こんな奇妙なデータみたことない。」
「輸血の際に調べた血液型が…」
「ああ…」
「この世に存在しない不明な型だったとは…」
「いい研究材料になりそうだな…」

K子は思った。
『なんだ…A型じゃなかったんだ…』

今更ながら怒りがわいてきた。

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