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好きと言えなくて…(2)

[542]  優風  2009-04-12投稿
十一月の集会での発表時に僕ら保健委員会は劇をする事になった。これから冬にかけ寒くなるにつれて流行るインフルエンザの予防をテーマにした劇だ。主人公は五年生の“正士”がやる事になった。僕は正士の父親役に決定した。僕のセリフは“テレビばかり見ていないでちゃんと勉強をしろ”というセリフだけだった。
劇をする集会当日、いつもに増して緊張していた。いつもの発表時でもかなり緊張をしてステージに立つのだが今回は劇をやるという事で余計に僕を緊張させた。主人公の正士と比べて脇役だからセリフも出番も少ないのだが劇という物を全校生徒の前でやるのがとても恥ずかしかった。
集会は生徒会の進行によって進められ僕ら保健委員会が劇をする番になった。正直、何かアクシデントが起こって劇が中止になればいいのにと僕は心の中で願っていたが願いは虚しくも叶わずインフルエンザをテーマにした劇は始まった。そして、劇はたんたんと進み僕の出番がきた。息子役の正士に“テレビばかり見ていないでちゃんと勉強しろ”と与えられたセリフを口にした。他の者と比べて下手くそな演技でしかも完全な棒読みだった。体育館の中に少しだけ笑い声が聞こえた。僕は自分の出番が終わった事から少し緊張がほぐれた感じを覚えた。
劇が終わって自分の座る位置に戻ると横にいる“弘昌”が
「よっ!大根役者」
と、からかってきた。
僕も、
「うるせえ」
と、言い返す。すると前に座ってた“大介”までもが「下手くそな演技だったな」とにやけながらからかってきた。
「元々、役者向きな性格はしてないんだよ」
と、僕も言い返した。そう言った後に美香の方をちらりと見ると隣の女の子と楽しげにしゃべっていた。きっとさっきの劇について話してるんだろうなぁとぼんやり考えてると朝の集会が終了した。
教室に戻り、朝の会が済むとすぐに一時間目の国語の授業が始まった。僕の席は窓際という事もあってぼんやりと外のグラウンドを眺めていた。僕の授業に集中してない様子に気づいた“谷川先生”が、
「こらっ。健治君、ぼやっとしてないでさっき読んだ続きを朗読しなさい」
と、注意をしてきた。授業に集中してなかった僕はどこから読めばいいか分からずあわてふためいた。「テレビばかり見てないでちゃんと勉強しろ」
弘昌の言葉に教室中がドッと笑いの渦に包まれた。その日はずっとそのセリフで一日中からかわれた。

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