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○●純+粋な恋拾遺●1

[520]  沖田 穂波  2009-04-19投稿

○●純+粋な恋拾遺●1

1-1 こころ憂し

15年前の事である。
階堂家の近くには,
春になると見頃を迎える桜並木。そして,
そのすぐ側に古くから続く書道指南所があった。
そこで師範として務めていたのは,淡矢春子。
純や,京太郎の母親である。

指南所の春子と言えば,
ここらでは,いい歳しておてんばな変わり者として知られていた。

当時,6才の粋乃は,
近所に住むこの変わり者のおばさんが,
なんだか好きだった。


初めて粋乃が春子に出会ったのは3ヶ月前,
春子が子供を連れて指南所に移り住んできたばかりの時の事だ。

粋乃は階堂と言う名家に生まれ,
毎日を厳しい規則に縛られて生活していた。
6才の粋乃にとって,
それはかなりの重荷だったのだろう。
そんな厳しい規則に嫌気がさし,
粋乃は家を抜け出した。

自由に外で遊びたかったのだ。
名家の1人娘なだけに,1人で外を出歩くなど言語道断。
いつもなら階堂家に仕える女中をお供させるはずである。
やわずか6才の粋乃に何かあったら大変だと,
女中達はパニックになった。

階堂家総出で粋乃を探索する中,
その騒ぎの種である粋乃をあえて隠すようにしたのが,春子である。

「こっちへいらっしゃい。誘拐と

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