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○●純+粋な恋拾遺●2

[402]  沖田 穂波  2009-04-20投稿

1-2 こころ憂し

「誘拐だとか思わないでね。お嬢ちゃんが帰りたくないって顔をしていたから,ちょっと協力してあげたの。」

春子は少年のようにニッと笑った。
粋乃は,
何故かその無邪気な笑顔につられ,
ついて行ってしまったのだ。

春子は粋乃を指南所の離れに案内した。

春子には何故粋乃が
家を抜け出したのか分かっていたらしい。
どちらかと言うと,大人よりも子供の気持ちの方が分かるのだ。

「お願いがあるの‥」

粋乃は春子の顔をじっと見て,少し顔を赤らめて言った。

「粋乃と,
遊んでくれる?」

「‥そうねぇ。
じゃあ,ちょっとだけ。」

もちろん春子はそのつもりで粋乃を隠した。
粋乃は,

「ありがとう。」

と,
満開の笑顔で言った。


日も傾き,
粋乃脱走の騒ぎが町をも巻き込み始めた頃,
春子は粋乃をおぶって階堂家へ向かっていた。
たくさん遊んだせいか,粋乃は春子の背中で小さな寝息をたてている。

階堂の家の立派な門をくぐり,呼び鈴を鳴らすとすぐに女中が飛び出してきた。

「お嬢様,
無事で良かった。」

「大変申し訳御座いませんでした。
粋乃ちゃんを隠したのはこの私です。」

粋乃を
女中に預けるなり春子は深々と頭を下げた。
女中は信じられないと言う顔で春子をじっと見ている。

「ただ子供らしくなって欲しがったんです。」

「そんな下らない事でお嬢様を?大変な事をしてくれましたね。
町じゅう騒ぎだったのですよ?」

女中は粋乃を大切そうに抱えて言った。

●●続く●●

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