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裏切り〈2〉

[460]  夏姫  2009-04-23投稿
私、百合はただ今大学一年生。
将来的には獣医になりたい、って考えてる。
たくさんの小さな命を、この手で助けたいと思ってる。
「百合!次の移動、一緒に行こ!」
「うん、いいよぉ」
大学に入ってから新しくできた友達の楓は、いつも仲良くしてくれる。
人見知りの私にとっては、楓はすごく大切な存在だった。
「次ってなんだっけ?」
「解剖じゃなかったっけ」
「そうだった!!」
「あはは、楓ったら」
そんなふうに、私はキャンパスライフを楽しんでいた。
その時だった。
ドン!
「あっ、ごめんなさい」
角を曲がったところで誰かにぶつかった。
「いえ。こちらこそ、よそ見をしていたので…」
その声が男のものだったので、百合はさらに慌てた。
男に免疫がないのだ。
「いっ、いえ!本当にこちらこそ…」
そう言いかけて百合は言葉を止めた。
(紫苑…!!)
そう、目の前にいたのは、まぎれもなく昔付き合っていた人そのものだった。
「…あの、どうかしましたか」
しかし、目の前の男性は特に気にするような素振りを見せなかった。
「…いいえ。何でもないの。ただちょっと見覚えがあるような気がしただけ」
慌てたつけた笑顔に気づかないのか、紫苑はにこっと笑った。
「そうでしたか。ですが多分、人違いだと思いますよ。…失礼ですが、見覚えがないもので」
申し訳なさそうに肩をすくめる、紫苑に似た人を百合は疑いの眼差しで見た。
(この人の言ってること、本当なのかしら…。でも、嘘をついてるようには見えないし…)
そこで、百合はある考えにたどり着いた。
「あの、名前を教えてもらっても…」
〜キーンコーンカーンコーン
「ちょっと、百合!遅刻になっちゃうじゃない!急がなくっちゃ! 」
言うと同時に、楓は百合を引っ張って行ってしまった。
「ちょっと待って!?私まだあの人に話が…」
「後にしなさい!」
そうして、紫苑似のコに何も聞けないまま終わってしまった。
百合の心に小さな不安を残して…。

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