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○●純+粋な恋拾遺●5

[412]  沖田 穂波  2009-04-27投稿

1-5 こころ憂し

「どうして,
お母さんの葬式をほったらかしにできるの?!」

「ほったらかしなんて,
してない。」

男の子の目は次第に潤んできている。

「お母さんは言った。こんなちっぽけな生き物の命の重さが,ちゃんと理解出来る優しい子になって欲しい‥って。」

男の子は働かせていた手を止めた。

「だから僕は,
お母さんの望みを叶えてあげるんだ。
優しい子に,ならなきゃいけないんだ。」

― そうか‥。

と,粋乃は男の子の潤んだ目を見た。

― それが,あの人の望み  なんだ‥。

何かを決意した様に空を見上げた。

優しい子。

― 春子おばさんの望ん
だ様な子になろう。

粋乃は今日,心の中で優しさを誓った。


住職のお経はまだ続いている。

「じゃあ,僕行くね。」

男の子は,
駆け足で家の中へ入って行った。


それから16年後,
幼かった2人の子供は,
優しさを保ったまま成人し,この桜並木で,
再び出会うこととなる。

●●こころ憂し
    終わり●●

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