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それでも俺は愛してる〜前編〜

[644]  サイ=ノート  2009-05-03投稿
小学生の恋はよく麻疹に例えられる。大人から見れば、確かに一時のものに見えるのだろう。好きな女子を必死に追っている姿は、何とも可愛らしいものなのだろう。どうせ結婚まで考えてないのだろうと、浅はかでみっともないものなのだろう。俺達の恋は、その全ての場合に共通して大人の見せ物なのだ。いかなる助言の裏にも、そういった思いを感じるのは俺だけではあるまい。
だが俺は違う。馬鹿にしたければするが良い。俺は結婚まで考えて追っているのだ。
出席番号9番、木戸遥菜。決してクラスのマドンナという訳ではないが彼女の美しさを否定する者はいないだろう。決して優しい訳ではないが俺は彼女を嫌ったりしない。4年前、この学校に転校してきた彼女に、当時の俺は何の感情も持たなかった。小学2年生になったばかりの俺は、一目惚れという事をするほど大人ではなかった。只、新しい友達が出来ることに喜んでいただけだった。4年生になってまもなく、俺は多分人より早い時期に自我を持った。目の前の人間が全て自分と仲良くなれる存在でない事を知ったのだ。程なくして俺は、座右の銘を身につけた。「友達を持つな。親友を持て。」である。自分を偽ればいくらでも作れる友達に何の価値があるだろうか。そう考えた俺は、西川龍治という親友以外とは極力話さない事にした。リュウはクラスでも人気があり、とても優しくて気が付く良い人間であり、それらに1分の悪意も感じないのだ。彼とは去年同じクラスになり、すぐに仲良くなった。
しかし1年もたつと、そんな俺と仲良くする人は1人もいなかった。リュウだけは俺の本意に気付いて仲良くしてくれるが、俺がリュウと話そうとするとそれを邪魔する人が出てくるくらいにまでなった。
恋心の始まりはその年の夏だった。かつて学年の中心にいた俺は、その時にはいじめられるほどまで嫌われていたのだが、ある日給食のカレーの中に亀虫を入れられた。当時先生にさえ嫌われていた俺を助けてくれる人は1人もいなかった(リュウとはクラスが違った)のだが、怒りを抑えていた俺の後ろから大きな音がした。振り向いてみると犯人が倒れていた。その横に立っていたのが他でもない、遥菜だったのだ。彼女は何も言わずに犯人を睨み付け、共犯者を睨み付け、先生を睨み付け、俺に笑いかけ、席に戻っていった。

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