その男(続)
職場に着き自分のデスクを見るなり僕はげんなりした。
やり直しと一言、心なしか荒々しく書かれた書類が無造作に置かれている。目を通す事もせず僕は書類を手に取りデスクからUタ−ンすると入口のごみ箱に無造作に捨てた。
電話の鳴る音、人の話し声、カタカタとパソコンのボードを打つ音が四方八方から聞こえる。
「間壁」
周りがこんなにも慌ただしくうるさいというのになぜこの人の声はしっかり聞こえるのだろう。
「間壁、ちょっと来い」
振り返り声の主を見る。僕はこの人の声に対し特別良く聞き取れるセンサーでも付けているのだろうか。
「今、行きます」
呼ばれた理由は分かる。見なくても周りが笑っているのも分かる。
前に来るなり一言。
「何回もやり直しをさせるな。次の発刊は二十日後なんだぞ?もう少し捻った書き方してみろ」
「申し訳ないです」
もう何回目だか分からない頭を下げる。
「インタビューならまだしもお前がやってるのは二つのアルバムの解説だ。それも雑誌のだ。長々書けと言ってるんじゃない。」
はぁと溜息混じりで言葉が続く。
「入社前に書いて来たライブレポ、あれ、本当にお前だろうな?」
僕です−
頭の中でその言葉が特急の様に通っていく。
「僕です。」
「だったらこんなものは楽勝だ。いい文章打って来い。」
有無を言わさずそう言われる。
「はい」
お辞儀をして自分のデスクに戻ろうと振り返った背中をまた前に向ける。
「どうした?」
「あの、言い忘れていたんですが編集長、お早うございます。」
「…お早う、仕事しろ」
分かってますと呟きそそくさとデスクに戻ると僕は仕事に取り掛かった。
−10分後、またも僕は同じ人物に呼ばれる事になる。
1日目の奇跡はそこから始まる。
やり直しと一言、心なしか荒々しく書かれた書類が無造作に置かれている。目を通す事もせず僕は書類を手に取りデスクからUタ−ンすると入口のごみ箱に無造作に捨てた。
電話の鳴る音、人の話し声、カタカタとパソコンのボードを打つ音が四方八方から聞こえる。
「間壁」
周りがこんなにも慌ただしくうるさいというのになぜこの人の声はしっかり聞こえるのだろう。
「間壁、ちょっと来い」
振り返り声の主を見る。僕はこの人の声に対し特別良く聞き取れるセンサーでも付けているのだろうか。
「今、行きます」
呼ばれた理由は分かる。見なくても周りが笑っているのも分かる。
前に来るなり一言。
「何回もやり直しをさせるな。次の発刊は二十日後なんだぞ?もう少し捻った書き方してみろ」
「申し訳ないです」
もう何回目だか分からない頭を下げる。
「インタビューならまだしもお前がやってるのは二つのアルバムの解説だ。それも雑誌のだ。長々書けと言ってるんじゃない。」
はぁと溜息混じりで言葉が続く。
「入社前に書いて来たライブレポ、あれ、本当にお前だろうな?」
僕です−
頭の中でその言葉が特急の様に通っていく。
「僕です。」
「だったらこんなものは楽勝だ。いい文章打って来い。」
有無を言わさずそう言われる。
「はい」
お辞儀をして自分のデスクに戻ろうと振り返った背中をまた前に向ける。
「どうした?」
「あの、言い忘れていたんですが編集長、お早うございます。」
「…お早う、仕事しろ」
分かってますと呟きそそくさとデスクに戻ると僕は仕事に取り掛かった。
−10分後、またも僕は同じ人物に呼ばれる事になる。
1日目の奇跡はそこから始まる。
感想
感想はありません。