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猫物語その16(改)

[480]  α  2009-05-21投稿
 しかし子猫は思い惑ってしまいます。。
 蛙たちの とんちきさ加減を目の当たりにした後では そのとんちき達が食べていたものに 病を癒すという常軌を逸した効果があるなどとは子猫には到底 思えなかったのです。
 もし 蛙の煎餅に見なされている機能が全くの出鱈目であったなら この愛する者を失いつつあるザリガニは、蛙の煎餅にかけた希望を 自らの伴侶の外殻同様 見るも無惨に打ち砕かれて、改めて絶望と悲しみの奈落へ突き落とされることでしょう。
 それは、つむじ風という自然の脅威によって 是非もなく無理強いされた悲運を、成す術がないからとはいえ黙然と耐え忍ぶだけよりもさらに なおいっそう酷なことではないでしょうか。
 しかし、子猫はすでに自分が蛙の煎餅を持っていると ザリガニに話してしまいました。一度口からでてしまったことは、いくら戻って来てくれと頼んだところで帰って来はしないのです。もし帰って来ることがあるとしたら、そのかつて放った言葉は他者を経由することで大きく変貌を遂げていることでしょう。
 子猫にはザリガニの頼みを断ることなど できなくなっていました。

 わかりましたにゃ。わたしは このお煎餅の効果を試したことがにゃいので どうなるかは判らにゃいですが、ザリガニさんが望むにょでしたら このお煎餅を差し上げますにゃ。
 ですが蛙たちに風呂敷の結び目を片結びにされてしまって 自分では ほどくことができにゃいのです。
 お急ぎのところお手数ですが 背中に登って包みにょ隙間から ご自分で取り出していただけますにゃ?。

 と申しました子猫は前足を屈めて可愛らしいポーズで頭を低くしました。

 おお...!有難う、有難う...。
 すまないが背中に失礼させていただく。

 子猫にザリガニの願いをききいれる義務はありません。断られる可能性に不安を抱いていたザリガニは安堵して 目に涙さえ滲ませましたが、子猫には その様子がますますもって重圧に感ぜられるのでした。

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