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猫物語その17(改)

[505]  α  2009-05-21投稿
 ザリガニは なんとも羨ましいことに 子猫のふかふかと柔らかい 保温効果を高めるため、短い毛と長い毛の二重構造になっている皮毛に半ば埋もれつつ 子猫の首に巻き付けられた風呂敷包みに向かいます。

 子猫は背中でうぞうぞと動く感触に 悪寒を覚えながらも たたき落としてねこぱんちをベシベシ加え脳震盪で弱ったところを噛み砕き、獲物を仕留めたいという狩猟本能を懸命に押さえて 健気にうずくまっているのでした。

 世界中の猫を愛して病まない人々が夢に抱く事柄のひとつ、猫登山を終えてザリガニが地上に降り立つのを確認し子猫は身を起こします。

 有難う、猫殿...。みどもはなんと礼を述べるべきか...。

 煎餅を鋏に抱えてザリガニが感謝するのを遮って子猫は申します。

 そんにゃことより早く奥さんに お煎餅を食べさせて あげて下にゃい。

 子猫としては結果も見届けず礼を受けるのは 恐々とするばかりです。
 ザリガニは子猫の勧めに素直に従い、鋏で煎餅を挟んで伴侶の口元で開きました。
 鋏の間から煎餅の細かい かけらがぱらぱらと伴侶の口の中へ落ちてゆきます。
 するとどうでしょう。砕けた外殻が淡く虹色に輝いたかと思うと薄い膜が みるみるうちに傷口を覆ってゆくではありませんか。

 おお...。

 にゃんと!

 子猫とザリガニは驚嘆のあまり非個性的な一の句から さらに二の句が接げません。

 あなたに お煎餅を食べさせていただくなんて何年ぶりでしょうねぇ...。

 か細く掠れた声が横たわるザリガニからもたらされたのは間もなくのことでした。
 息も絶え絶えだった伴侶のザリガニは 暗い冥府の闇から意識をこの世へ引き戻すことができたようです。

 おお...お前、気が付いたのだな...。

 ザリガニは安堵と喜びに胸を打ち震わせ、子猫と子猫が運んできた幸運によって救われたことを心の底から祈るように感謝したのでした。

 殻が厚くなり乾いたら脱皮もできよう...。
 四〜五回ほど脱皮を繰り返せば動けるようにもなるであろう。

 そうザリガニが申しましたので子猫もほっと息をつきました。

 有難う、猫殿。そなたはみどもらの恩猫じゃ...。

 いえ、全ては お煎餅のおかげです。本当に助かって喜ばしいですにゃ。

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