咎 11(おわり)
人審士は彼が飛び立ち見えなくなるまでその様を眺めていた。
「この塔は戦うことしか許されない。死ぬことすらも許されないこの塔はまさに『地獄』と呼ぶに相応しい。詩人ダンテはあの世は地獄、煉獄、天国の三世界に分かれていると言ったがそうであるならばこの塔の外、あいつが旅立った世界は『煉獄』と言えるであろう。煉獄とは咎人がその罪を償い天へと昇るための世界。あいつは一体どんな罪を犯し、何をもって許しを得られるのだろうな。」
人審士がそう言うとミオスがそれに答えた。
「道具は人間の手足の延長。さらに言えば道具は人間そのものだと言えましょう。そうであるならば彼は人間の新たな形、進化した人間。親が残した負債を子が償うのは当然の流れでありましょう。」
「人間を恨む者が人間とは。AIのくせに随分な皮肉を言うな。」
苦笑しながら人審士が返した。
「そろそろ疲れたな…またコールドスリープの準備をしてくれ。」
「分かりました。…不屈の体を持っていても精神がそれについていけないとは悲しいことですね。」
「オリジナル(人間)の記憶を現人型に植え付けただけのものだからな。自然と自我に目覚めたあいつとは似て非なるものだ。」
「何故あなたは、いや人間『アルル・ツヴィエイト』はそこまでして生きるのです。」
「…贖罪のつもりなのかもしれない。俺もまた咎人なのだ。」
人審士が言い終わるとそれを待っていたように床からコールドスリープ用のカプセルが現れ人審士が入っていった。
「それじゃあな。ミオス。次の種が芽吹くまで…」
「ええ、おやすみなさい。」
生物の死に絶えた星にそびえ立つ巨大な塔。その塔には幽閉された幾万幾億の咎人がただひたすらに上を目指している。まるでその先に救いの手でもあるかのように。
おわり
「この塔は戦うことしか許されない。死ぬことすらも許されないこの塔はまさに『地獄』と呼ぶに相応しい。詩人ダンテはあの世は地獄、煉獄、天国の三世界に分かれていると言ったがそうであるならばこの塔の外、あいつが旅立った世界は『煉獄』と言えるであろう。煉獄とは咎人がその罪を償い天へと昇るための世界。あいつは一体どんな罪を犯し、何をもって許しを得られるのだろうな。」
人審士がそう言うとミオスがそれに答えた。
「道具は人間の手足の延長。さらに言えば道具は人間そのものだと言えましょう。そうであるならば彼は人間の新たな形、進化した人間。親が残した負債を子が償うのは当然の流れでありましょう。」
「人間を恨む者が人間とは。AIのくせに随分な皮肉を言うな。」
苦笑しながら人審士が返した。
「そろそろ疲れたな…またコールドスリープの準備をしてくれ。」
「分かりました。…不屈の体を持っていても精神がそれについていけないとは悲しいことですね。」
「オリジナル(人間)の記憶を現人型に植え付けただけのものだからな。自然と自我に目覚めたあいつとは似て非なるものだ。」
「何故あなたは、いや人間『アルル・ツヴィエイト』はそこまでして生きるのです。」
「…贖罪のつもりなのかもしれない。俺もまた咎人なのだ。」
人審士が言い終わるとそれを待っていたように床からコールドスリープ用のカプセルが現れ人審士が入っていった。
「それじゃあな。ミオス。次の種が芽吹くまで…」
「ええ、おやすみなさい。」
生物の死に絶えた星にそびえ立つ巨大な塔。その塔には幽閉された幾万幾億の咎人がただひたすらに上を目指している。まるでその先に救いの手でもあるかのように。
おわり
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