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黒い友達

[741]  hiro  2009-05-29投稿
僕には1人だけすごく仲良しの友達がいる。
逆を言えば、その1人以外は、誰も友達がいない。
その僕の唯一の友達とは、とても小さな頃から仲が良かった。
僕はその友達を「黒ちゃん」と呼んだ。
黒ちゃんは僕と同じで、僕以外に誰も友達がいないらしい。
その証拠に黒ちゃんは僕としかしゃべらなかった。
だから僕らは、小学校へ行くときも、放課後に遊ぶときも、いつも一緒だった。
「公園で遊ばない?」
僕がこう言うと、いつも必ず同じ答えが返ってくる。
「もちろんだよ。ボクと君は友達だろ?」
黒ちゃんに顔が無くたって、笑っていることぐらいは僕にも分かった。

いつも一緒にいるだけに、1人になりたい時もあった。
「黒ちゃんなんてどっか行っちゃえ!僕から離れろ!」
僕の言葉に、黒ちゃんは黙りこくった。
それでも黒ちゃんは僕について来た。走って逃げようとしても、走ってついて来る。
「もう、何でついて来るんだよ!?」
「だって、ボクと君は友達だろ?」
その黒ちゃんの言葉で、いつも僕は思い知る。
黒ちゃんが、僕の大切な友達だってことを…。

ある日突然、黒ちゃんがポツリと言った。
オレンジの光が注ぐ、夕暮れの公園でのことだった。
「君とはもうしゃべれなくなっちゃうんだ…」
僕は驚いた。
「な、何で!?どういうこと!?」
「君みたいな子なら、きっとたくさん友達ができるよ」
「僕には黒ちゃんしか…」
僕の言葉を遮って黒ちゃんは言った。
「いつまでもこのままじゃダメだと、ボクは思う」
「え…」
「君としゃべられなくたって、ボクは君をずっとそばで見守るよ」
「う、うん…」
「これは、男と男の約束だ!」
そして僕は地面に手のひらを置いて、黒ちゃんと手をあわせた。
それから黒ちゃんは二度としゃべらなくなり、ただの影になった。
黒ちゃん、僕、なんだか頑張れる気がするよ。
友達何人できるかな?

僕は公園をあとにした。
僕の影が、約束を守るためなのか、ちゃんと僕について来た。

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