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美しい命

[402]  拾諸填  2009-05-29投稿
絵の具を塗りたくったような真っ青。
空に張り付いて取れやしない。
じっと見ていると吸い込まれるから、私は下を見ながら進んだ。
土、もぐら、蟻、ダンゴムシ。
私の足元では生命がひしめいていた。
踏まないように歩いた。
でも、目に見えない小さなダニは、この足の下で短い生涯を終える。

生命は美しい。

野性動物の筋肉の躍動感、木陰で奏でられる虫達の愛のメロディ。
私は傷つけたくなかった。
だから立ち止まることにした。これ以上命を踏み潰してしまわないように。
食べることもやめた。
命を奪いたくなかったから。
きらめく、星のような命を奪いたくなかったから。
吐く息は二酸化炭素。
地球が温暖化して、多くの生物が絶滅する。
私は呼吸するのをやめた。


呼吸をやめた私の周りには、お腹をすかせた動物達が集まっていた。
私の体はひきちぎられ、噛み砕かれ、小さく小さくなっていった。


やがて私はお腹の一杯になった動物達の体の一部として生き続けることになる。
動物達は栄養を蓄え、美しい、新しい命を生むだろう。
人間のように、ただ生きているだけで他の生物に迷惑をかけるような下卑た命ではなく、
光 輝く、美しい 無垢な命だ。


私はその一部になったのだ。
こんな幸せなことがあるだろうか。


耳を澄ませて欲しい。
美しい命の美しい声に。

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