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マゴノハアモニカ

[921]  山田某  2009-06-01投稿

川のそばのガードレールでおばあさんがおろおろしている。
「どうかしました?」

訪ねてみた。

『いえね,うちの孫がこの間事故で死んじゃったのよ。』

今にも泣きそうな顔で答える。
ばあさんを泣かす趣味はない。

「はぁ・・お気の毒です。」
『その時に大事にしてたハーモニカを川に落としたみたいなのよ。
私腰が悪くて川までおりれなくて・・・。』


ちらちらこちらを見る。優しそうな顔してなかなかやらしいばあさんだ。

ガードレールの向こうは川まで軽い坂があって,確かにおばあさんにはキツい。

「いいですよ。自分が取ってきます。」

バッとガードレールを飛び越し,川に降りた。
すると,坂の途中に下水が流れる小さなトンネルのような穴があった。


その入り口に血がべっとりついたハーモニカが落ちている。
「げっ・・・これか?」

事故にあったと言っていたから,その子の血だろう。
しかし血はとうに乾いているのに,たった今着いたかのような凄まじい血の匂いがする。

とにかくそれをおばあさんに持っていった。
「これですね!どうぞ。」

ハーモニカをおばあさんに渡すと,可愛らしい笑顔で,


『ありがとうね・・。
持って行ってあげなきゃ。』





そう言うとおばあさんは力なく頭から岩肌へ飛び込んで行った

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