死者の戯れ
……?……
時刻は、午後11時半。とあるマンションのエントランスに、霧島直哉はいた。
ここは、直哉の住むマンション。彼がいても何らおかしくはない。
だが、それにしては、どこかぎこちなく、中へと足を踏み入れずに、オートロック扉の前に佇んだままだ。
まるで、家へ帰るのを躊躇っているかのように…。
出張帰りの直哉の表情は、疲労感が滲みでている。ともなれば、普通なら居心地の良い、我が家へと足は加速するもの。にも関わらず、その足は立ち止まり、家路へ着こうとしない。
「はあ…」
直哉は、憂鬱そうに、大きなため息を吐くと、今度は、そわそわ落ち着きなく、扉の前を行ったり来たりし始めた。
そんな彼の家路を妨げる理由は、妻の七海にあった。
実のところ、二人の仲は上手くいってなかったのだ。それが原因で、直哉の足には重い鉛が課せられ、我が家への進路を阻まれてしまう。
まあ、仲が上手くいかない夫婦なんてのは、この世の中、五万といる事だろう。年々、離婚する夫婦が増加している事からも、それは見てとれる。
そもそも、夫婦なんてのは、所詮は他人同士。その男女が、同じ屋根の下で暮らす事自体、非常に難しい事。生まれや育ちも違ければ、互いの生活スタイルも違う。歪みが生じて、当たり前だ。
直哉達も、そんな夫婦のターニングポイントへと差し掛り、今では互いの顔さえも見るのもままならぬ状況にまで陥っていた。
だからって、ずっとここにいるわけにもいかない。暫く、ドアの前を行ったり来たりしていた直哉だったが、覚悟を決めたかに、オートロックパネルの暗証番号を押した。
時刻は、午後11時半。とあるマンションのエントランスに、霧島直哉はいた。
ここは、直哉の住むマンション。彼がいても何らおかしくはない。
だが、それにしては、どこかぎこちなく、中へと足を踏み入れずに、オートロック扉の前に佇んだままだ。
まるで、家へ帰るのを躊躇っているかのように…。
出張帰りの直哉の表情は、疲労感が滲みでている。ともなれば、普通なら居心地の良い、我が家へと足は加速するもの。にも関わらず、その足は立ち止まり、家路へ着こうとしない。
「はあ…」
直哉は、憂鬱そうに、大きなため息を吐くと、今度は、そわそわ落ち着きなく、扉の前を行ったり来たりし始めた。
そんな彼の家路を妨げる理由は、妻の七海にあった。
実のところ、二人の仲は上手くいってなかったのだ。それが原因で、直哉の足には重い鉛が課せられ、我が家への進路を阻まれてしまう。
まあ、仲が上手くいかない夫婦なんてのは、この世の中、五万といる事だろう。年々、離婚する夫婦が増加している事からも、それは見てとれる。
そもそも、夫婦なんてのは、所詮は他人同士。その男女が、同じ屋根の下で暮らす事自体、非常に難しい事。生まれや育ちも違ければ、互いの生活スタイルも違う。歪みが生じて、当たり前だ。
直哉達も、そんな夫婦のターニングポイントへと差し掛り、今では互いの顔さえも見るのもままならぬ状況にまで陥っていた。
だからって、ずっとここにいるわけにもいかない。暫く、ドアの前を行ったり来たりしていた直哉だったが、覚悟を決めたかに、オートロックパネルの暗証番号を押した。
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