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死者の戯れ

[661]  風戸 桂  2009-06-01投稿
……?……
「しかし、あんなあっさり死んでくれるなんてめでたいよな」
「うふふ。だって、まさか、刑事のあなたが、毒を仕込ませたなんて、思わないわよ」
「そりゃそうだな。あははははは」
「うふふ。あはははは」

七海と小暮は、腹を抱え、大笑いしている。

やはり、直哉の死も、自殺ではなく、この二人の差し金だったようだ。話しから察するに、どうやら、葬儀の際の返杯の時に、小暮が毒物を混入したらしい。

「あの遺書も笑えるわよね。あいつ、自分で直筆で名前書いたのよ。ホント、めでたいわよ」
「あの時、俺が刑事だからって、何も確認せず、サインしてくれたからな」

サインと言えば、直哉は小暮の取り調べの最後に書類にサインしている。
あれこそが、直哉を自殺へと追いやる為の布石だったのだ。
実は、あの書類、ただの白紙。それを使い、ワープロで文を綴り、遺書に仕立て上げたのだ。

「あんな男が、私に勝とうなんて笑っちゃうわ。犯罪を成立させるには、それ相応の計画を立てなきゃ不可能よ。あんな単純な方法で私を殺そうなんて、馬鹿にしてるわよね。うふ」
「はは。七海には、誰も敵わないよ。俺も含めてな」
「うふふ」

何とも恐ろしい考えをしてるのだろう。
直哉は、犯行を行う際、手の込んだ事は敢えてしなかった。しかし、七海は逆に綿密に計画を立て、小暮という幸いのパートナーを備え実行した。
どこまでも、直哉の考えを逆手に取り、勝利をもぎ取ったのだ。

せめてもの救いは、直哉がこの事実を知る事なく、死んでいった事だろう。

そして、誰も真実を知る事はないであろう…。

2年後。七海と小暮は異国へ移住していた。直哉の遺した保険金を元に、二人は海外での新たな生活を共に満喫していた。

『』

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