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ダークシューズ

[776]  山田某  2009-06-05投稿
はっきり言って,俺は足が遅い。
明日は学校の体育祭で,くじで負けた俺はアンカーを務める事になった。

いじめられてる訳じゃないが,
足の速さに関しては《ドン亀》《遅マツ君》などとからかわれている。
「明日休みてえなぁ・・。」
そんな思いにふけっていた下校中。
“ドサッ”
突然空から不思議な袋がふってきた。
「なんだこれ・・?」
中を覗くと,不気味な程真っ黒な物体と紙が入っていた。
紙を読んでみると,
“ダークシューズ”
“オソロシイ ハヤサデ スベテヲ カケヌケヨ”
とだけ書いてあった。

足が速くなるのか・・?半信半疑で俺は家に持って帰った。
靴を出してみると,『黒』と表現するには明るすぎる程の深い,闇の様な色だった。
「凄い色だな・・まあとりあえず明日穿いて走ってみるか。」

次の日。体育祭だ。
アンカーは2周走る決まりだが,うちのチームは1周遅れで,勝つのは普通に無理だった。
これだけ離されていれば勝てないのは当たり前だな,と正直少し安心した。
リレーのアンカーで待機していた俺にバトンが渡された。
軽く踏み出した俺は鳥肌がたった。
《ドギャッ!!》
俺の足は耳をつんざく爆発にも似た音と共に,砂煙を巻き上げた。

気味の悪い速さで景色が流れている。色すら識別出来ない。
そう思った瞬間,俺は2位と大差をつけ,1位でゴールしていた。

しばらくの沈黙,そして周りから割れんばかりの拍手と驚きの声があがった。
観客から先生まで,全員が興奮している。
俺は間違いなく,その時ヒーローだった。
しかししばらくしてみんなの声が止まり,どよめきだした。
俺を見た人が悲鳴をあげている。
なんだ?どうした・・・。
意識が薄らぎ,俺はばったりと倒れた。
その瞬間,俺は死んだ。

あの靴が凄い速さで駆け抜けたのは,地面だけじゃなかったんだ。

スベテヲ カケヌケヨ

俺の死因は・・・・・・






老衰だった

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