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君からの手紙〜32〜

[430]  YOSI  2009-06-13投稿
偶然があまりに重なっていることに、勇一は信じられない気持ちでいた。
「その夕樹さんですけど…今、私のいるスーパーで、パートとして働いてますよ」
「えっ!そうなんですか?私…今日も探してて、あきらめかけてたんです。…まさか、こんな形で、たどり着けるなんて…」
だが、紀子は冷静に幸子に手紙を渡せるか不安だった。
覚悟を決めたものの、いざ本人を目の前にして、渡せるのかと…

その時だった。
幸子が一人で入ってきた。
偶然もここまでくると、神がかっているが、幸子は勇一に気づいた。
「あっ!こんばんわ。どうしたんです」
「いや、ちょっとね。夕樹さんは?」
「私は…母が入院しているんで…たまに一人で、ここに食べにくるんです」
そう言うと、軽く会釈して、奥の席に行った。

「彼女です…」
「そうですか…」
紀子は、突然の幸子の登場に、戸惑っていた。
勇一も嶋野も、紀子の心の動揺ぶりは察していた。

…しばらくの間、沈黙が続いた。
「森田さん…」
「はい?」
「怖いですか?」
「…はい」
勇一の質問に、紀子は素直に答えた。
「ですよね。…でも、嶋野さんが由美の願いを守ったのと同じで、あなたも託された人の願いを果たすべきだと思います」
勇一の、その言葉を、紀子は重く受け止めていた。
だが、いざ行くとなると、足がすくんだ。
嶋野は、そんな紀子の気持ちを汲んで、「森田さん、もし躊躇してるなら、俺が渡そうか?やっぱり、重い役目だもんね?」と、助け舟を出した。
勇一も、「嶋野さんの言う通り、重い役目ですよね?
嶋野さんと2人で話してきますよ」と言ってくれた。
2人の思いやりに、紀子は感謝していた。
…そして覚悟を決めた。
「嶋野さん、荒木さん…ありがとうございます。正直…怖いです。…でも、勇気をもって渡しますよ」
紀子のその言葉に、勇一と嶋野は大きく頷いた。
「なら、彼女を呼びます。ここじゃなんですから、場所を変えましょう」
「お願いします」
勇一は、幸子の方に行った。
「夕樹さん」
「はい?」
「食事終えたら、話があるんだ。あの女性が…時間あるかな?」
「ええ。いいですよ」
「じゃあ、待ってる」
3人は、幸子が食事を終えるのを待った。


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