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ロストクロニクル7―20

[364]  五十嵐時  2009-06-14投稿
「・・・ダイヤ」
「あの野郎!」
タクトたちは鏡に向かってそれぞれ武器を構えた。
スペースの鏡でできた体も、ここでははっきりと見ることができた。
細長い尻尾が、鏡の中のタクトたちを包むように包囲していることが見てとれる。
タクトは思わず後ろを向いたが、当然の如くそこに尻尾は無かった。
「どうやらあたしの正体を知ったらしいね」
ダイヤは、鏡の中からこちらを見据えてきた。スペースは、尻尾と同じように細く長い舌をチロチロと出したり入れたりしている。
「ああ、君はかなり大昔のクレイラの住人らしい」
タクトは日記を拾い上げた。
「大昔のクレイラの住人たちが、君の強力過ぎる鏡の力を恐れ、どこかに閉じ込められたんだろう?」
ダイヤからの返事は無い。代わりに、スペースが威嚇するかのように甲高い鳴き声を上げた。
「そして、君が初めて僕たちと出会った時に見せたものが当時のクレイラだ」
「そう。その通り・・・そうだ。いい場所に連れてってあげる」
ダイヤが両手を天に翳すと、忽ちタクトたちを取り囲んだ。

気がつくと、そこは周りには何もない、暗く、ただただ広いだけの空間だった。
「ここは!」
ただ、真ん中にポツンとひとつの机だけがある。それ以外、何も無い。パールもウェドもフラットも・・・
タクトは吸い寄せられるように机に近づく、何も聞こえない、無音の世界だ。
近づいてみると、机のそばの椅子に誰か座っている。見たこともない女の子だ。
泣いている?
女の子は泣きながら机に向かい、タクトの普段使っている言葉でない、言葉を口にしながら、何か書いている。
何かが軋む音がした。扉が開いたようだ。
女の子はこの時を待っていたようにニヤリ、と不気味な笑みを浮かべた。
そして、女の子はみるみるうちに、その姿を変えていった。
「その瞬間、あたしは死んだ」
後ろから声が聞こえる。
ダイヤだ。
「そして・・・」
扉を開けていたのは、女性だった。女の子とよくにているが、その顔は恐怖に歪み、手に持っていた食べ物を落とした。
「あたしは鏡の力を最大限に使った」
今、女の子の姿は完全に化け物に変わり果てている。
あの姿は!
化け物は女性をその細長い尻尾でたたきつけると、目の前に鏡を作り出し、一目散に鏡の中へ入った。
椅子にはひとつの骸骨が腰掛けていた。

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