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ほんの小さな私事(20)

[426]  稲村コウ  2009-06-16投稿
「バカヒデッ!何で真後ろでぼっ立ってんのよ?ビックリしたじゃないの!」
高野さんは、そう、ボサボサ頭の男子生徒に怒鳴り付けた。
「…いや…そんなつもりじゃ…なかったんだけどね…。あ…どこまで計算したんだっけ…。」
彼は、高野さんにそう答えつつ、何やら、手に持っている手帳を眺め、やはり頭をかきながらブツブツと何かを呟き続けている。
よく見ると、手帳を持つ手には更に、器用に電卓を持っていて、頭をかいている手に、シャープペンシルを持っていた。
「ちょっとぉ〜、何よ、その態度?あんた、可愛い乙女が倒れてんのに、それを助けようともしないの?最ッ低!」
そう毒づく高野さん。それに対してヒデと呼ばれた彼は、やっと高野さんが倒れているのに気づいた様な反応をして、やはり何かを呟きつつ、シャープペンシルを持った手を、高野さんの方に差し出してきた。
だが、高野さんは、その手を強く叩き払った。
「遅いわよっ!もういい。沙羅ちゃんが助けてくれてるし…あ、いたた…。それに、あんたの助けなんか借りたくもないわよ。」
彼女は、私の助けを受けつつ、立ち上がりながら彼に毒を吐き続ける。
「…助けろと言ったり、助けは要らないと言ったり…矛盾してるね。」
私も正直なところ、そう思ったのだが、この彼は、その事をストレートに言ってきた。
「うっさい!っていうか、あんたと喋ってると疲れる。もうあっちいっていいよ。」
「…そうか。まあ、悪かった。」
彼はそう答えた後、そのまま、やはり、何かを呟きつつ、手帳にメモをしながら、Eクラスの教室に歩いていってしまった。

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