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人斬りの花 11

[367]  沖田 穂波  2009-06-24投稿

2-6 椿

女の目が覚めたのは,
ちょうど太陽が昇りかけた頃だった。


― ここはどこ?

見慣れない景色に女は微かに恐怖を覚えた。
だが,
挫いた足が丁寧に手当てされているのを見ると,
危ない所ではないのだと確信できる。

『あら,目が覚めたようだね。』

ちょうど女の様子を見に来た旅籠屋の女将,トシが言った。

『ここは柳瀬屋。旅籠だよ。あんた,何も覚えてないのかい?』

『‥確か,お侍さんにおぶってもらって‥。』

トシの気さくな性格に,
女は怯える事もなく答えた。

『そう,そのまま眠っちゃったんだよ。お侍さんの背中で。』

トシはその時の抄司郎を思い出して,

『わたしゃ,あの人のあんなに戸惑った顔を見たのは初めてさ。』

と,吹き出して笑った。

『あの人が帰ったら礼の1つでも言ってやると良いよ。あんたのその足の手当てまで,してくれたんだからさ。』

『‥そう,なんですか。』

女は手当てされた足を見た。


― 悪い事をしてしまった‥。

女は素直にそう思った。


≠≠続く≠≠


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