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ほんの小さな私事(31)

[356]  稲村コウ  2009-06-29投稿
髪の毛を洗い、身体の垢を流して、私は風呂からあがった。
バスタオルで身体の水滴を拭い下着を着けたあと、鏡の前で髪の毛をブローする。私は少し髪が長めなので、手入れに時間が掛かるのが難点だが、父がこの髪の毛を誉めてくれたのが嬉しくて、ずっとこのスタイルを通しているのだ。
髪の手入れを終えた後、バスローブを纏い、部屋に戻ろうとした時、玄関から弟の声が聞こえてきた。
「ただいま〜。あー、腹減った。」
「あら潮ちゃん、おかえりなさい。」
私はバスローブ姿のまま玄関に出向き、弟を出迎える。すると弟は、呆れかえった表情で私に言った。
「…あのさ、ねぇちゃん…玄関にその格好で出てくんのはどうかと思うぜ?」
まあ確かに弟の言う事ももっともだが、身内だとわかっている手前、特に気にせず出ていっただけである。
「別にいいでしょう?この格好、潮ちゃんもよく目にしているんだし。ね。」
「はー。いや…まあ、別にいいんだけどさ…。今日は俺一人で戻って来たからいいけど、これが友達連れだったらどうすんだよ?」
弟は、首を左右に振りながら、呆れ顔でせう言った。確かに言われてみればそうだ…と思い、私は彼に答えた。
「そうよね。こんな格好で潮ちゃんのお友達を迎えるとかってなっちゃうのは失礼だし、次から気をつけるわ。」
「…いや…問題はそこじゃねーんだが…。っつーか、部屋戻って服着てこいよ。」
彼は、階段の上を指差しつつ、そう言った。

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