ほんの小さな私事(43)
「ちょっと、待ちなさいよ!」
高野さんは、櫻井君に向かって叫んだが、彼は振り向きもせず、そのまま走り去ってしまった。
「櫻井君って、案外いい人じゃないの?」
「私もそう思います。」
私たちが二人してそんな風に言っていると、高野さんは、首をブンブンと横に振った。
「そんな事ない、ないッ!あいつに限っていい人とか、あり得ないんだから。」
そう言って彼女は、櫻井君に手渡されたフィルムを投げ捨てようとしたが、投げ掛けたそれをジッと見たあと、憮然とした表情を見せてぼやいた。
「まったく…なんでこんないいフィルムよこすのよ…。しょうがないから、きっちり使ってやるわよ。」
彼女はそう言って、フィルムをカメラバッグにしまった。その一方、私たちは二人顔を見合わせて、クスッと笑いあった。
「別に私、あいつを許した訳じゃないんだからね。さ…もう行きましょ。」
彼女はどうも、彼に対して素直になれない様だ。彼女と彼との間にどんな事情があるかはわからないのだが…。
と。少々ひと悶着あったものの、私たちは、改めて学校への道を歩き始めた。高野さんは、その道のりのなか、ずっと複雑そうな表情のままであった。
高野さんは、櫻井君に向かって叫んだが、彼は振り向きもせず、そのまま走り去ってしまった。
「櫻井君って、案外いい人じゃないの?」
「私もそう思います。」
私たちが二人してそんな風に言っていると、高野さんは、首をブンブンと横に振った。
「そんな事ない、ないッ!あいつに限っていい人とか、あり得ないんだから。」
そう言って彼女は、櫻井君に手渡されたフィルムを投げ捨てようとしたが、投げ掛けたそれをジッと見たあと、憮然とした表情を見せてぼやいた。
「まったく…なんでこんないいフィルムよこすのよ…。しょうがないから、きっちり使ってやるわよ。」
彼女はそう言って、フィルムをカメラバッグにしまった。その一方、私たちは二人顔を見合わせて、クスッと笑いあった。
「別に私、あいつを許した訳じゃないんだからね。さ…もう行きましょ。」
彼女はどうも、彼に対して素直になれない様だ。彼女と彼との間にどんな事情があるかはわからないのだが…。
と。少々ひと悶着あったものの、私たちは、改めて学校への道を歩き始めた。高野さんは、その道のりのなか、ずっと複雑そうな表情のままであった。
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