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神の丘〜歩み〜終

[566]  佐奈  2009-07-14投稿
「何時もありがとうございます」

「いやいや、それはこっちの台詞だよクロム!あんただけだよ、毎日この店に来てくれるのは!」

肩には大きなタトゥーをいれ、顔は髭で覆われた男がクロムの肩を叩く。

「しかし、毎日牛乳のビン2本買っていくとは、相当な牛乳好きなんだな!お腹壊さないか?」

金色の長い髪に、クリーム色のスータンを着たクロムが、両手に二本の牛乳ビンを抱え、言った。

「いえ、私が全部飲むわけではなくて、一緒に住んでいる人が、本当に牛乳が好きで‥」

「そいつの為に、毎日買って帰るのかい‥くぅ〜〜!あんた、優しいね〜!本当!地球にも、この店にも!おじさん涙が出てきたよ!!」

男は、腕毛の濃い太い腕で、顔を覆い、鼻を鳴らしながら言った。

「えっ‥いや‥おおげさでは‥?」



「はぁ〜‥」

深いため息をつきながら、クロムは部屋の扉を開けた。


「‥鍵が開いていたぞ、クロム」


「・・・・!」

部屋の奥の扉が少し開いていて、そこから声がする。

「憂牙!帰っていたんですか‥お帰り!」

クロムは奥の部屋の前まで駆け出し、暗い部屋のソファーに寝そべり、本を顔の上にかぶせている憂牙に嬉しそうに話しかけた。

「‥“鍵が開いていた”と言っているんだ、クロム」

「‥あっ‥その‥下の食品店にちょっと行っていただけで…すいません」

本を顔からどかし、起き上がる憂牙。クロムの手に持っているものを見て、ため息を付く。

「牛乳屋でも始めるのか?冷蔵庫に1リットルの牛乳ビンが10本入っていたぞ」

「‥すみません」

少し落ち込んでいるクロムを見て、憂牙は、また短くため息をついた。そして、ソファーから立ち上がり、クロムの手に持っている牛乳ビンを一つ取り、またソファーに戻った。

深く腰を掛け、牛乳を“ゴクリ”と飲み始める。半分位飲んだところで、ポツリと喋り始める。

「‥“自分の生きた痕跡を自ら消した者”と“自分が存在している痕跡が無い者”…そして」

憂牙はクロムの顔を見上げ、言った。

「‥“自分の生きた痕跡を無くした者”」

「・・・?」


「一週間ぶりだなクロム‥‥ただいま


      〜歩み〜終

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