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猫物語その29

[525]  α  2009-07-15投稿
 わかったにゃ!誠心誠意 全力を尽くして怪盗ねこひげから そのリョウテキを守ってみせるにゃ!
 この微風をも感知する神経伝達に優れた ねこのひげ にかけて!

 と 子猫が意気込むのを さえぎって猫丸は声高に唸ります。
 まるで蛇の威嚇音そっくりで子猫も猫八も どきりとしました。

 リョウテキじゃない!リュウテキだ!
 なんども言わせるな!

 コ、コメンニャサイ...

 猫八は猫丸が なぜそこまで こだわるのか解せない様子で目を細めています。

 と、そこへ お店の仕事を一段落つけた 《猫cafe‐猫屋猫八‐》の おかみさんが 桃色がかったオレンジ色のエプロンで両手を拭きつつ 猫たちに声をかけます。

 もう閉店にするから、片付けが済むまで奥に居ててちょうだい。
 すぐ ごはん用意するから。

 猫八は《猫cafe‐猫屋猫八‐》の看板猫でもある近隣界隈のボスなのでした。
 猫八がぐるぐると唸りながら撫でようとした手に逆に頭を押し付けているのを、おかみさんが優しく受け止めていると 小さな子猫が目に留まりました。

 あらあら、小さな お客さん。
 猫八の お友達?
 あなたも ごはん食べてきなさいね。

 にゃにゃっ
 これは ご厚意いたみいりますにゃ。

 と やや焦りつつ おかみさんに礼を述べる子猫を見て、おかみさんは うれしそうに言います。

 あら、ちゃんと お返事するのね。賢いわー。

 どうやら おかみさんは 猫好きではあるものの、猫語を解するほどの年功者ではないようです。

 猫丸君も久しぶり。いつもの如くスマートでスレンダーでクールな美猫ぶりね。

 しかし猫好きであることには遜色ないようです。

 猫八が おもむろに おかみさんの足元に自分の身を擦り付けて寄り添いました。
 おかみさんが仕事のため そばにいられない間に薄れてしまった猫八の においを つけなおさなければ ならないからです。 猫の頭頂部や口の端には嗅腺なる器官が存在し、独自の識別嗅を分泌することが できるのでした。
 しかも猫科の骨格は頭頂部が へこんでいるため禿げるのではないかと見ている側が心配になるほど頭を擦りつけても痛くないようです。
 まさに機に応じ理に適った進化の美しさと言えるでしょう。

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