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猫物語その30

[482]  α  2009-07-15投稿
 晩御飯は白身魚の素焼きでした。
 なんでも本日は唐渡りの調理法「天麩羅」を記念し、さらに丼勘定を戒めるために天丼を食べる「天丼節」だったのだそうです。
 そのため余った食材のうち白身魚が猫たちに振る舞われたのでした。
 しかし、《猫カヒェー‐猫屋猫八‐》では小麦粉の値段高騰の あおりを受けて素揚げに変更されたメニューが増え、これでは天丼節とは言えん!小麦粉なくして天麩羅が成立するものか!と不評を被ったので猫八は大いに不機嫌でした。
 彼は自分の大事なおかみさんを気遣かったわけですが、人間からすれば やはり例年ならば かき揚げにされるはずの野菜たちが きんぴらにされていたのでは やるせなく思うのも無理からぬことでしょう。
 なにゆえ小麦粉の輸入が再開されて久しいと いうのに小麦粉製品の価格は、いつまで経っても高騰以前のそれにまで回復しないのでしょうか。

 そんにゃに大切なにゃ?
 その「天丼節」って。

 と、炭水化物にも油物にも縁のない食肉目ねこ科の子猫は ききました。
 猫に甲殻類やイカ・タコ、味つきの食品、炭水化物などは どんなに可愛いらしく おねだりされても あげてはいけません。
 たとえ美味しそうに食べたとしても猫達の消化器官には負担がかかりすぎるのです。
 猫の期待に応えられないことは身を切るほど辛いでしょうが猫のためを思えばこそ堪えなければなりません。
 また猫に不適切な餌付けを為そうとする者があれば断固 阻止すべきです。

 さあな、人間の することは時々わからん。

 と猫丸は洒落た さばとらのコートを毛繕いながら応えます。
 猫の毛繕いは食後のエチケットとして、また衛生状態を保ち かつ 食べたものの残り香を消すために欠かせない習慣ですので邪魔をしてはいけません。
 それなのに子猫ときたら、おかみさんに抱えられて撫でられ見つめ合っている猫八を目撃して呆けてしまい毛繕いが おろそかになっています。

 あまり見てるなよ、あとが恐いぞ。

 猫丸の忠告に子猫は我に かえって背中から尻尾の先まで毛を逆立て おののいたのでした。
 可愛がってくれる人の前では猫を被っていても後々けじめを つけることは忘れないコもいます。人間に甘えているのを見られるのが恥ずかしかったりするのでしょう。猫八も そのタイプです。

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