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ほんの小さな私事(58)

[341]  稲村コウ  2009-07-31投稿
暫くした頃、お昼休み終了十分前のチャイムが鳴ったので、私たちは、借りていく本を、受け付けに持っていった。
高野さんが貸し出しの手続きをしたあと、今度は私が手続きをしようとしたのだが…。
「これ、貸し出しカードが付いてない…。沙羅ちゃん、これ、どこから持ってきたの?」
山下さんがそう聞いてきたので、私は、地域資料のコーナーから持ってきた事を告げた。それを聞いて山下さんは、林さんに古ぼけた本の事を聞きにいった。
「おかしいわね。今、外側のラベルにある数字打ち込んでみたけど、本の登録はされてるのよね。そうなると、貸し出し出来る本って事になるけど…貸し出しカードを作り忘れちゃってたのかしらね?」
貸し出しカードというのは、本の一番最後のページに着けてある紙ポケットに入っているもので、ここに過去、誰がこの本を借りたか記されている紙の事だ。
他の本には全て、このカードが差し込まれているのに、私が持ってきた古ぼけた本には、カードもそうだが、紙ポケットさえ付いていなかった。
「まあいいわ。牧野さんなら信頼出来ると感じるし、今回は、こっちで事務処理しておくから、そのままそれ、借りていっていいわよ。」
そんなこんなで、林さんの計らいで、今回は、貸し出しカード無しで古ぼけた本を貸し出してもらえる事になった。

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