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奇跡 7

[476]  木村蜜実  2009-08-02投稿
達也の実家。
大きな門構え。
広い庭。
お坊ちゃまとは聞いてたけど、こんなにとは………。

こんなに大きな家を見たら、不安だった気持ちが少し和らいだ。

お手伝いさんに言われるがまま、客室へ案内される。

「あかねさん。ありがとう。よく来てくれましたね。」

私の手を握りしめて、達也のお母さんは涙を流した。

私は、役に立つのだろうか…。

「早速で申し訳ないけど、達也に逢ってもらえます?」

「…はい。」

私はまた、お手伝いさんとお母さんに案内され、達也の部屋へ行く。

「達也、入るわよ。」

ノックを3回して、ドアを開ける。

薄暗い部屋の中、
達也は返事もせず、壁をずっと見ている。

「達也…あかねさんよ…。」

お母さんがそう言うと、達也はこっちを見た。

「あかね…?」

前の面影がなく、痩せていて、ヒゲも伸びていて、髪も伸びきっている、変わり果てた達也がいた…。

「た…達也…。」

私は前に進む事が出来なかった。涙が溢れ、立ちすくんだ。

達也は私を見て、目を丸くした。

(やっぱり、混乱しちゃうかもしれない…。)

そう感じた。

すっと立ち上がり、私の方へ歩いてくる。

私の前に立って、髪をなでる。

私の知っている達也がいる。

「あかね…。」

そう呟いて、私を抱きしめる。

細くなってしまったはずの腕なのに、強く、温かい…。

「覚えているの?私の事…。」

「…ん。覚えてる…。逢いたかった…。あかね…。」

覚えていた…。

私の事を覚えていた…。

それがわかった途端、声を出して大泣きした…。

「あかねにずっと謝りたかった…。あの時お前の事を捨ててしまって…。ずっと後悔してたんだ…。離れて気付いたんだ…。俺は…あかねが1番大事だって事が…。」

達也は私の頬に手を当てて…。

「あかね…愛してる…。」


これが、奇跡なのかもしれない…。

達也が言ってた…。

奇跡…。

その時、私の背中に熱い痛みが走った。

「ごめん…あかね…愛してるから、俺と一緒に死んでくれ…。」

口から血を吐いて、達也を見た。

「達也…イヤだよ…達也…。」

奇跡を感じた瞬間だったのに…。

達也…。

私は、愛する人に刺されて、意識が遠くなっていく…。

意識がなくなる時、達也が自分の首を刺していたのが見えた。

私は、達也と死んでしまうのか…。

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