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ある男の日記 #5

[494]  ルイス・サイファー  2009-08-03投稿
4月23日

また記憶をなくしたようだ。


ここ数日の自分の行動が思い出せない。



仕事が忙しいせいか。


授かった子供の責任感のせいか。


つわりの酷い女房を気遣うせいか。




薬も飲み切り、病院にも行っていない。

勧められたカウンセリングも受けていない。

今まで以上に大きな不安を感じる。


今のおれに子供を育てられるのだろうか。



いくら前向きに考えても、そう思えない自分がいる。



最近酒の量が増えてきた。

女房との会話は減ってきた気がする。





5月2日

女房と喧嘩した。


原因は些細な事だった。


コーヒーが熱かったというだけで、朝から言い争ってしまった。


気まずいまま出勤して、なんとか仕事を終えた。


帰宅してもほとんど会話も出来ず、女房は眠った。



寝室に向かう女房の後ろ姿を見て思った。



産まれてくる子供と今後の生活に対する不安は、おれだけが感じていたのではなかった。

毎日否応なく迫るつわりにも女房は耐えていた。


おれに迷惑と心配をかけないようにと。



おれより辛いのだろうに。




おれは馬鹿だ。



ここに誓う。


今まで以上に女房を気遣おう。


明日の休日、お袋に報告がてら相談しよう。


それと、ちゃんと病院に行こう。




おれもしっかりしなくては。


女房に負けちゃいられない。


おれと女房と、産まれてくる子供のために。





5月3日

久しぶりにお袋と話した。

子供を授かった報告をした。



怒られた。



もっと早く教えろと言われた。


それでもお袋は嬉しそうだった。

近いうちに女房を連れて実家に来るよう言われた。



女房に対しての相談をした。


お袋曰く、さりげなく気をつかえ。


普段と変わらね素振りで、でも注意深く女房を見守れ。


決して大袈裟にはするな、と。




涙がこぼれた。





少し話して電話を切り、病院に行った。


世間では連休中なのに、そこの先生は変わらずに話を聞いてくれた。


以前とは違う薬を処方された。


それとは別に、話してくれた。


出産の不安に対する一番の薬は、明るい未来を想像する事。


それは医学ではなく、先生の経験によるものだそうだ。


気持ちが少し軽くなった。





7月5日

苦しい。

生きているのが辛すぎる。

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