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ほんの小さな私事(61)

[337]  稲村コウ  2009-08-04投稿
私たちが弓道場に居た頃、別の場所で、事件が起きていた。
山下さんは、図書館から一度、校舎に戻ろうとしていた。
図書館の二階にある資料室の鍵を職員室に取りに行く為であったが、本人は下の渡り廊下から、校舎へと移動していたのだ。
昨日の事もあったので、あまり本人としては、こちらを通りたいと思っていなかったのだが、この時は、同じクラスの図書委員である香取君が一緒だった為、心配はあるものの、下の渡り廊下で行く事にしたのである。
「山下さん、この間借りたか本、面白かったよ。あの作者って、あんなものも描くんだね。」
「でしょう?あたしも最初、本当に同じ作者の物か見分けがつかなくて驚いちゃった。ただ、お話の作り方とかは、あの人らしいかなーって、読んでて思ったし、続刊も気になっちゃうよね?」
「うんうん。取り敢えず、借りてたのは返しておくよ。あと、僕も何かお勧めできそうなのがあれば、探しておくから。」
「うふふ、ありがと。」
二人はそんな風に談笑しながら廊下を歩いていたのだが、廊下の真ん中辺りに人が集まってざわめいているのに気がついた。
「あれ?なんだろう…。何かあったのかな?」
香取はそう言って、人が集っている側に行こうとしたが、山下さんは、その場に立ち止まって硬直してしまった。
それに気がついた香取君は、山下さんの居る方に戻ってきて心配そうに聞いた。
「どうしたの、大丈夫?気分でも悪くなっちゃった?」
山下さんは、その声で我に返り首を横に振って「大丈夫。ごめん。」と答えた。
しかしやはり、昨日の事が脳裏に浮かび、あの時の恐怖を思うと、早くこの場を立ち去りたいという気持ちで心がいっぱいになっていた。
「いこうか…。」
様子が一変した山下さんを気遣ってか、香取君は、山下さんの手を取ると、そのまま、人混みの横を通り過ぎる感じで歩き始めた。
山下さんも、香取君の手を、無意識に強く握り返しつつ、香取君の後を歩いた。
人混みの横をすり抜ける際、山下さんは横目で、人混みの様子を伺う。するとそこには、二匹の動物が横たわっている姿が見えた。

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