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奇跡 2章 2

[347]  木村蜜実  2009-08-06投稿
家の前に着く。

「ありがとう♪」

いつものように、お礼を言う。

「あぁ…。」

僕は話しをする事だけを考えていたから、返事が曖昧になった。

「さて…。」

あかねは体ごと僕の方に向け、

「話し…あるんでしょ?」

僕の目をじっと見つめて、あかねは僕の言葉を待つ。
その真っ直ぐな瞳に前から僕は弱い…。

「あぁ…。あのさ、今日で終わりにしないか…。俺、九州行くし、もう会えないからさ…。」

言いにくい台詞…。
高まる鼓動…。
あかねの顔が見れない。

「言うと思った。」

あかねはまた、外を見る。

「それだけじゃないでしょ?」

ちらっと僕を見る。

「えっ…?」

「他にも話しあるでしょ?」

「……ないよ。」

嘘をつく。

しばらく無言…。

タバコをくわえ、深いため息を隠すように煙を吐く。

「そっか…。」

あかねの頬に涙が流れる。

「向こうへ行って、あたしは会いに行っちゃダメなのかな…。」

こっちを見ようとしない。

「ごめん…。会いにきても、無理なんだ。」

「何故?」

「何故って…それは…。」

「ダメって事なんでしょ?」

「あぁ…。」

僕は、最後まで嘘をついてしまうのか…。

「わかった。」

そう言って鼻をすする。

あかねはこっちを見た。

「ダメな理由は聞かない。達也が決めた事なら、あたしはそれでいいと思う。そのかわり、………」

あかねは僕に唇を重ねて、すぐ離れた。

「あたしの事、忘れないでね…。」

微笑んで、車から降りようとする。

僕は慌ててあかねの腕を掴む。

「あかね、ごめんな。」

春香の事が言えなかった。
言わなきゃいけない事だったのに…。

僕の手を優しく離し、あかねは何も言わず車を降りた。

最後まで嘘をついた僕。

最後まで笑顔だったあかね。

僕の恋は罪悪感を残しておわった。

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